梅毒はトレポネーマという病原菌によって引き起こされる性病だ。感染すると、約3週間後には感染個所に痛みのないしこりが現れ、約3カ月後には全身にピンクのブツブツが発生する。それらが自然に治まると、その後は潜伏期に入る。
治療をせずに放置してしまうと、3年後ぐらいから全身の臓器に腫瘍が現れ、心臓、血管、神経、脳などに障害が出て、最悪の場合は死に至ることがある。妊娠している人が梅毒に感染した場合、死産や障害の原因になることもある。
国立感染症研究所によると、感染後にしこりやブツブツが出る症状を見過ごしてしまい、治療をしないまま潜伏期に入ってしまった患者も多いと見ている。
そうしたことから、実際の新規梅毒感染者は統計よりもずっと多く、年間に少なくとも3000人は超えるのではと予想する専門家もいる。梅毒は、早期発見で治療を開始すれば1カ月以内に完治するケースがほとんど。しかし、放置して治療が遅れると、悪化して長期化する恐れが高い。
厚生労働省では最近の女性患者急増を受けて、急遽「女子の梅毒、増加中!」というリーフレットを作成。「コンドームの適切な使用によりリスクを減らすことができます」などと呼びかけている。
梅毒はコンドームだけでは防げない
ところが、梅毒は皮膚や粘膜の接触により感染するため、コンドームだけでは100%予防できない。オーラルセックスやアナルセックスはむろん、ディープキスだけでも感染する可能性がある。何しろ1回あたりの性行為による感染確率は15〜30%と、非常に高いから厄介だ。
ここ数年の患者増の原因は、まだ明らかにされてはいない。しかし「梅毒は過去の病気」と軽視されるあまり、感染経路や症状に関する知識が一般に浸透していないとしたら問題だ。
不特定多数の相手との性交渉は避け、コンドームはきちんと使用すること。また思い当たる症状があれば、すぐに検査を受けること。流行を拡大させないためには、それぞれが正しい知識をもって自衛していくしかないだろう。
(文=編集部)