2015年6月20日、日産婦は、産科医の不足問題に対処するため、基幹病院に産科医を集約し、勤務負担の軽減を図るための行動計画を発表した。
発表によると、常勤の産科医の4割は女性医師で、20~30歳代では6割を超える。女性医師の約半数は、妊娠中だったり、小学生以下の子どもを養育しているため、当直勤務や出産の立ち会いを外しがちになる。産婦人科は、女性の視点を活かせるし、妊産婦も女性医師を歓迎する。だが、女性医師の増加は、他の勤務医に負担を強いる結果を生んでいるのが現実だ。
日産婦の行動計画がめざす目標は、大規模化・重点化。つまり、産婦人科の常勤医を、都道府県の高度な医療を行う総合周産期母子医療センターに20人以上、地域の中核を担う地域周産期母子医療センターに10人以上集める。さらには、主治医制を廃止する、交代勤務を多くする、病院内に保育所を設置するなどの改善索を講じながら、常勤医が男女問わず適正に勤務できる環境を整えるという。
日赤医療センターの産婦人科(東京都渋谷区)は、6年前から産婦人科で日常化している当直明けの診療を廃止、日勤を引き継ぐ2交代制を導入した。2交代制によって、妊娠・育児中の女性医師も勤務しやすくなっただけでなく、疲労による医療ミスが減り、勤務医らの不公平感も解消された。
日赤医療センターでは「子育て中の女性医師がストレスなく働き続けられるように、各都道府県に1カ所だけでも医師を集め、交代勤務制を早急に導入するべきだ」と強く主張している。
ところが、人口10万人当たりの産科医数は、茨城が4.8人で最も少なく、最も多い東京と沖縄の11.1人と比べると、2.3倍以上の地域格差がある。産科医の偏在と地域格差がすぐに解消できるかどうかは未知数だ。
2004年に福島県立大野病院産科で起きた妊婦の死亡事件の後、分娩予約できない、出産施設が見つからない、妊婦がたらい回しされるなどの産科医療バッシングが「お産難民」を生み、社会問題化した。「お産難民」の悲劇は、絶対に避けなければならない。国や自治体、病院、そして日産婦や日産婦医会も「産科医の不足、地域格差の是正」に取り組み、最善策を実行してほしい。
(文=編集部)