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【シリーズ「傑物たちの生と死の真実」第10回】

発明家エジソンの晩年は、糖尿病、高血圧、腎炎とも闘った「闘病王」!

 Genius is one percent inspiration, 99 percent perspiration.

 天才は1%の閃きと99%の汗。

 「私の言葉が誤解され、99%の汗ばかりが強調されている。汗を流せば成功すると思うのは間違い。私は1%の閃きと言ったはずだ。1%の閃きを無視してはならない」

 この1%の閃きによって、自動電信機、電気投票記録機、株式相場表示機をはじめ、電話、蓄音器、電気鉄道から、鉱石分離装置、白熱電球、動画撮影機キネトグラフに至るまで、生涯におよそ1300もの発明や改良の偉業を積み上げたエジソン。

 だが、その不滅の金字塔のウラで、数え切れない失敗や敗北、耐えがたい痛恨や挫折を嫌というほど味わっている。直流送電にこだわり過ぎたために「交流電流は危険」という誤った宣伝工作に走る。ジョルジュ・メリエスの傑作『月世界旅行』の公開前に無断販売して巨万の収益を手にする。大型発電所に導入する発電機の大失策や、J・Pモルガンとの確執からGE社の社長を更迭される屈辱や辛酸も舐めた。

 「私は運なんか信じない。幸運も不運もだ。私は狙った結果が出るまでは絶対に諦めない。成功する最も確かな方法は、常にもう一度だけチャレンジすることだ」

 決して諦めない、負けない、挫けない「エジソン魂」。次から次と発明品を繰り出す「メンロパークの魔術師」。リュミエール兄弟と並ぶ「映画の父」、発明の特許権を死守するために法廷に立った「訴訟王」。エジソンの異名は多い。

 1931年10月18日、永眠。享年84。

 晩年は、聴覚障害をはじめ、糖尿病、高血圧、腎炎などの病魔に蝕まれながらも、特に重篤な合併症にも襲われず、天寿を全うした「闘病王」でもあった。

 エジソンの故郷を流れるオハイオ川は、ネイティブ・アメリカンの現地語で“Great River”を意味する。アメリカ大陸を滔々と潤すオハイオ川の流域面積は、およそ49万km2。日本国土のおよそ1.3倍もの大脈流だ。

 今日も、「エジソン魂」というGreat Riverは、疲れも知らず脈々と流れ続ける。


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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