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【シリーズ「子どもの心と体の不思議のサイエンス!」第10回】

赤ちゃんの脳の「感受性期」には個人差がある! シナプスの刈り込みが悪いとADHDに!?

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3歳までに教育的な刺激を与えれば高い能力を授かれる!?(shutterstock.com)

 前回、話したように、ニューロンやシナプスの数が増えると脳が重くなり、3歳でおよそ1200g、5歳頃に成人とほぼ同じ1300〜1400gになる。三つ子の魂百までと言うように、3歳頃までに教育的な刺激を与えれば、赤ちゃんは高い能力を授かれると信じられていた時期があった。

 だが、万一に備えてシナプスを多く蓄える過形成の仕組みや、シナプスを強くして情報伝達を効率化する刈り込みの働きが発見されたことから、赤ちゃんの脳は外からの刺激だけでは発達しないことが分かった。

 最近、シナプスの刈り込みが効率よく行えなくなり、脳の情報処理が遅れるために、発達障害の一つであるADHA(注意欠陥多動性障害)につながるとする有力な学説がある。

 ADHDの子どもは、学習障害や軽症アスペルガー障害などの合併症にかかる確率が66%も増加すると指摘する研究もある。また、成育環境からネガティブな打撃を受けやすいために、情緒障害をはじめ、行為障害、反抗挑戦性障害、不登校やひきこもりを招きやすい。このようなエビデンスから見ても、シナプスを強くして情報伝達を効率化する刈り込みの働きが重要なのは明らかだ。

 赤ちゃんの健やかな発育にとっては、外からの過剰な刺激は有害かもしれない。かつては、「鉄は熱いうちに打て!」とばかりに、脳が成熟する前にできるだけ早く教育する必要性が声高に叫ばれて、臨界期という言葉が多用されてきた。臨界期は、物理学などでよく使われる言葉で、物質がある状態から別の状態に移るギリギリの限界を指している。

 だが、早期教育しなければ手遅れになるなどの誤解を生むため、現在は、脳が赤ちゃんの能力を伸ばすための最適な時期を感受性期と呼んでいる。

感受性期は、シナプスがスクラップ・アンド・ビルドを繰り返している

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