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【連載「死の真実が“生”を処方する」第13回】

運転中に起きる心臓と脳の病気! 高血圧の治療が「交通事故死傷者」を減らす

 心疾患と脳血管疾患が、運転中の病気発症の2大原因であることはご理解いただけたと思います。交通事故死傷者を低減するためには、この2大疾患の発生を予防しなければなりません。そのカギを握るのが血圧です。

 高血圧は、虚血性心疾患や脳血管疾患における最大の危険因子です。そして、若年者から高齢者まで、血圧が高い人ほど循環器系疾患の罹患率や死亡率が高いのです。したがって、高血圧を治療して至適レベル(理想的なレベル)に保つことは、病気の発症を予防し、交通社会の安全を確保する上でも重要なのです。事実、運転中に突然死した人の病歴を調べたところ、高血圧が最も多くを占めているのです。

 冒頭でもお話ししましたが、高血圧の人の大部分は治療が行われていないか、あるいは不十分な管理状態であるため、血圧を適正な状態に保つことが求められます。特に職業運転者は、公共交通の中核を担い、かつ運転頻度が高いので、事故予防に一層の配慮が求められます。職業運転者は運転に従事する時聞が長いことから、必然的に運転中の病気発症頻度も高くなります。さらに職業運転者は、長時間安全に自動車を運転させるという、精神的かつ肉体的ストレスにさらされています。したがって、より一層、疾患の発生予防に取り組む必要があるでしょう。

 まず、簡単に始められる予防策は何か? それは塩分を控えること。1日当たりの食塩の摂取量を3g低下させることで、収縮期血圧が1~4mmHg低減できるといわれています。国民の収縮期血圧が2mmHg低下することで、心疾患と脳血管疾患になる人を5%以上減らすことができるのですから、有効なことです。


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一杉正仁(ひとすぎ・まさひと)
滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授。厚生労働省死体解剖資格認定医、日本法医学会法医認定医、専門は外因死の予防医学、交通外傷分析、血栓症突然死の病態解析。東京慈恵会医科大学卒業後、内科医として研修。東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程(社会医学系法医学)を修了。獨協医科大学法医学講座准教授などを経て現職。1999~2014年、警視庁嘱託警察医、栃木県警察本部嘱託警察医として、数多くの司法解剖や死因究明に携わる。日本交通科学学会(理事)、日本法医学会、日本犯罪学会(ともに評議員)など。

連載「死の真実が"生"を処方する」バックナンバー

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