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【シリーズ「子どもの心と体の不思議のサイエンス!」第6回】

マイペースなように見えて赤ちゃんの環境への順応力はスゴイ! 

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赤ちゃんの1日の合計睡眠時間は、およそ15~20時間(shutterstock.com)

 生後3ヶ月頃までの新生児は、オッパイをたくさん飲んで、ウンチをして、スヤスヤ眠る。体も心も脳も、グングンと成長するこの時期は、環境に慣れる順応力が赤ちゃんには欠かせない。意外にもマイペースのリズムで寝起きしている。

 寝る子は育つ、という。オッパイ、ねんね、ウンチ、ねんね、オッパイ、ねんね......。成長が著しい生後3ヶ月頃までの新生児は、昼夜の別なく短い睡眠を繰り返す。1日の合計睡眠時間は、およそ15~20時間。3~4時間おきに目を覚まし、オッパイを飲み、しばらくするとウンチをしたら、ねんねする。お母さんは、赤ちゃんのリズムに合わせて授乳やおむつ替えに忙しい。家事は少々手抜きしてでも、赤ちゃんのリズムに合わせて昼寝しなければ身が持たない。

 このように1日の大半を寝て過ごす赤ちゃんは、昼夜のリズムよりも、自分自身の体のリズムで寝起きしている。起きている時は、周りが暗くても目を開けている。明るいと自発的に目を閉じ、暗いと目を開けて、自分の好む環境で過ごす。この事実から、赤ちゃんは生後しばらくは、お母さんのお腹の中と同じような環境を好むのではないかという学説がある。

赤ちゃんは周りの環境に慣れる順応力がある!

 赤ちゃんは、周りの環境の影響を受けながらも、ある程度は自分のしたいように生きているらしい。

 たとえば、こんなエピソードがある。病院の新生児ICUは、予定より早く生まれたり、体力の弱い赤ちゃんをケアする設備だ。この部屋では、いつでも赤ちゃんの様子を観察できるように、終日、照明がこうこうと灯り、ガチャガチャと雑音が絶えないことも多い。

 そんな騒がしい環境は、赤ちゃんにとって良くないだろうと気を配り、照明を暗く、雑音を出さないようにしたところ、赤ちゃんの様子にとくに目立った変化や影響は見られなかった。

 これは、赤ちゃんが照明や雑音の環境に慣れるように、自分の体のペースを自発的にコントロールしているからと考えられる。この慣れ、環境へ柔らかな順応力こそは、未熟な赤ちゃんが生きるために、生まれつき備わった天与の本能であることは確かだ。

赤ちゃんは見慣れないモノを見つめ、慣れると目を反らせる!

 こんな簡単な実験がある。赤ちゃんに図形と色を組み合わせた単純な絵を見せると、興味を示して見つめている。同じ絵を何度も見せ続けると、回を重ねるごとに見ている時間が短くなる。見慣れたモノは、飽きてあまり見なくなる。だが、図形と色の組み合わせを変えた絵を見せると、再び興味を示して、見つめる時間が長くなる。このような見慣れないモノを見つめ、慣れると目を反らせる反応は、赤ちゃんの認知能力を知る、ひとつの目安になる。

 すり込み(インプリンティング)という思い込みも関係があるかもしれない。すり込みは、鳥がふ化した時に、最初に見たモノを親と思い込む学習現象だ。一度習得された行動は、非可逆的なので消えにくいが、ヒトの場合は、その後の経験や学習などによって修正されることが分かっている。

 すり込みと言えば、こんなエピソードもある。新生児ICUで育った赤ちゃんがお母さんを見てよく泣いた。ずっとケアしていた看護師さんは、お母さんにマスクをするように勧めてみた。お母さんがマスクをしてみると、赤ちゃんは、たちまち泣き止んだという。赤ちゃんの記憶に、「マスク=世話してくれるヒト」というすり込みが生じていた例だ。

これも、赤ちゃんのかしこく、やわらかく、バランスのいい順応力の現れかもしれない。
(文=編集部)

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