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【シリーズ「DNA鑑定秘話」第12回】

被害者の靴を奪って逃走する「シンデレラ暴行魔」逮捕の決め手は?

被害者の靴を奪って逃走する「シンデレラ暴行魔」逮捕の決め手は?の画像1

犯人は女性の靴に性的興奮を覚えるフェティシストだったshutterstock.com

 1983年、イギリス北部のサウスヨークシャー州は、連続強姦魔の恐怖に晒された。犯人は強姦の後、被害者の靴を奪って逃走する奇癖がある。巷では「シンデレラ暴行魔」の手口に恐れをなした。

 多くの状況証拠がある。警察は、性犯罪者リストに浮かび上がった人物をシラミつぶしに一斉捜査した。だが、次々と女性が襲われ、必ず靴が奪われる。当時はDNA鑑定が始まった頃で、データの有効性に疑念が残った。警察のおとり捜査も徒労に終わった。

 ある時、犯人は、被害者に顔を見られてしまう。警察は人相を再現したモンタージュを作り、容疑者を特定したが、その人物は仕事仲間からの信頼も厚い真面目な男だったため、容疑者リストから外される。

 捜査は振り出しに戻り、迷宮入りかと思われた......。

妹のDNA鑑定が明かした驚愕の真相

 最後の事件から18年の歳月が流れた2004年、事態は急転回する。警察が刑法犯罪者のDNAデータベースを調べたところ、容疑者のDNA(指紋や精液)と一致する人物が浮上。それはリンダとういう名の女性だった。

 連続強姦魔は女だった?

 2003年、リンダは交通違反で捕まり、DNAを採取される。イギリスでは軽い罪でも、犯罪者のDNAを採取されデータベースに登録される。警察はDNAデータベースを活用し、リンダの家族性DNAを照合。リンダと血縁関係にあると思われる人物を探した。該当したのはリンダの兄、印刷工場に勤めるジェームズ・ロイドだった。

 家族性DNAは、実の親子なら半分が一致する。同一の父母から生まれた兄妹は、必ずしも同じタイプのDNA配列を共有していないが、半分が一致する可能性が高い。警察は兄ジェームズと妹リンダのDNA型を照合。その結果、兄妹である確率を示す肯定確率(兄妹指数)に基づいて、兄ジェームズを真犯人と断定し、逮捕した。こうして妹のDNAが、シンデレラ強姦魔=ジェームズ・ロイドを白日の下に暴き出した。

 1986年にジェームズは結婚していた。その後、凶行は鳴りを潜める。ジェームズは、仕事1本の堅物の男にすぎなかったが、女性の靴に性的興奮を覚えるフェティシストだった。その欲望を満たすために、まじめな印刷工を装い、暴行に狂喜した。警察は、ジェームズの職場から無数のハイヒールを発見。2006年11月、ジェームズは、15年間は仮釈放されない終身刑を受けた。

佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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