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【インタビュー 超高齢社会の“人生ラスト10年問題“に向きあう 第3回 (社)チーム医療フォーラム代表理事 秋山和宏医師】

医療の目的は、すでに延命からQOLを高めることに移りつつある

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延命より生活の質が大切shutterstock.com

 今年の11月22日、東京の日本科学未来館で「MEDプレゼン」が開催される。秋山和宏医師が代表理事をつとめる「チーム医療フォーラム」が主催するイベントで、7回目を迎える。医療・福祉・介護の関係者から、ときには宗教家や死化粧師まで、医療に参加し社会を良くしようと志す人たち10名前後が、200名近い聴衆に向かって自分の活動をプレゼンするのだ。

"人生ラスト10年問題"を生み出す超高齢社会を迎えて、時代にふさわしい医療のあり方を考えよう。そして、従来の延命ありきとはまた違った角度から命をとらえようという意気込みに満ちている。

 団体の名前にもなっている「チーム医療」とは、21世紀になって注目されている新しい医療システムだ。主治医が決定し、看護師など各専門職に指示する従来のやり方ではなく、外科・内科・精神科など複数の科にまたがり、また医師や看護師のほかに薬剤師、栄養士、カウンセラー、ソーシャルワーカーなど複数の職種にまたがるチームで患者のケアをする。

 例えば、緩和ケアチーム、褥瘡管理チーム、感染症対策チーム、呼吸ケアサポートチーム、リハビリテーションチームなどさまざまなチームが知られているが、チーム医療が大きくクローズアップされるきっかけとなったチーム医療の代表格が栄養サポートチーム(NST)だ。

放課後の部活動のように始めた栄養サポートチーム

 秋山医師がこの新しい医療システムに取り組むきっかけとなったのが、まさにこの栄養サポートチーム活動だった。

 「藤田保健衛生大学病院の東口高志先生のセミナーを受講し、栄養療法を勤務している病院に取り入れました。高齢者の3割は低栄養だと言われています。患者さんの栄養状態を評価し、口から、静脈から、あるいは腸から足りない栄養を補給します。ただ、予算も人もありませんから、持ち寄りパーティーのように、専門スタッフが余った時間を提供しようということで始めました。放課後の部活のようなものです。3年ぐらいすると褥創発生率が減るなど、患者さんの自然治癒力があがってきて、抗菌薬の使用量も減ってきました」

 放課後の部活動は、それまで一緒に仕事をすることがなかった異部門のスタッフが協力するもので、つまりそれがチーム医療だった。秋山医師は、ラスト10年問題には、栄養療法が大きな力になると考えている。

 「万病に効く薬はありませんが、栄養は万人に効きます。高齢者は、たいがい、いくつかの病気を持っているので、ひとつだけ取り出して治療してもよしということにはなりません。これまで主流であった、ここが悪いからここを治すという考えかたでなく、体全体のレベルをあげていく、自然治癒力を高めていくという考えかたが、ますます必要になっていくでしょう」

生活の質を高め、予防する医療を

 最後に超高齢社会に対応するために、またラスト10年問題に対応するために、医療はどう変化したらいいいかを聞いた。

 今の医療は、病院というゴールで、病人や要介護になってしまった高齢者を待ち構える、ゴールキーパーの役割しか担うことができていません。これからは、もっと積極的に、病院の外に出て、予防に取り組んでいくことが必要でしょう。病気を治療する医療から、栄養療法を通して予防をする医療へと変化していくことが求められていると思います。それを、草の根運動で実践していこうというのが、チーム医療フォーラムなのです」


秋山和宏(あきやま・かずひろ)

一般社団法人チーム医療フォーラム代表理事、東葛クリニック病院副院長。1990年、防衛医科大学校卒業。東京女子医大消化器病センター、至誠会第二病院を経て、1999年より東葛クリニック病院勤務。2010年より副院長。「参加する医療で社会を良くする」ことを目指し一般社団法人チーム医療フォーラムを設立。著書:『医療システムのモジュール化』(白桃書房)、『チーム医療のソコヂカラ』(Kindle版)など。ヘルスウオーキング指導士、医学博士、経営学修士(MBA)、日本消化器外科専門医、日本外科学会専門医、日本静脈経腸栄養学会評議員、日本褥瘡学会評議員

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