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【連載第5回 薬は飲まないにこしたことはない】

リスクを伴うタミフルやリレンザ! それでも抗インフルエンザ薬に頼るのか?

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抗インフルエンザ薬「タミフル」 Stuart Monk / Shutterstock.com

 インフルエンザのウイルスに感染前、予防目的で投与するのがワクチンなら、感染後に病院で処方されるのが、タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬だ。

 しかし、これらの薬剤は、決してウイルスを「消滅させる」ものではない。ウイルスの「増殖を抑制する」だけである。それなのに、症状が出ると大抵の人が、薬を処方してもらうために病院に行き、余計に症状を悪化させてしまう。またそれによって、待合室などで他の病気の患者を感染させることにもなりかねない。

 薬を服用すれば、当然、副作用も懸念される。抗インフルエンザ薬のなかでもタミフルは、2001年の発売以来、特効薬として日本中で広く使用されてきた。だが、高い効果が得られるという評判の一方、「窓から飛び出す、飛び降りる」「部屋の中を駆け回る」 などの異常行動が報告されている。

 2007年、男子中学生がタミフル服用後、マンションから飛び降りて亡くなるという痛ましい事故が起こった。同剤が精神に作用を及ぼす可能性が指摘され、大きな話題となったので、覚えている人も多いだろう。

 タミフルと異常行動との因果関係は特定されていないものの、そのほかにも似たような症例が何例も報告されている。また、異常行動や精神障害のほか、全身にしびれが起こり立てなくなってしまった女性が、タミフルに起因するギランバレー症候群と診断された例もある。

 タミフルを飲んだからといって、全員に異常行動が見られたり、運動神経障害を起こしたりするわけではない。しかし、「精神や運動神経の障害が発現した例もある」という情報を前もって知っていたら、安易に服用する人は少なくなっていただろう。

 なお、すでにタミフルには、耐性ウイルスが発見されている。

なぜ日本はタミフルの消費大国となったのか?

 驚くことに、日本のタミフル消費量は世界全体の75%を占める。毎年、インフルエンザシーズンになると、「日本がタミフルを世界から買い集めている」と言われるほどだ。多くの備蓄を確保している理由のひとつは、2009年の新型インフルエンザ流行時に、小児用タミフルが不足して混乱を招いたことにある。

 このように日本政府はタミフルを大量備蓄し、病院では積極的に投与を行っている。だが、インフルエンザの流行は日本でだけ起こるわけではない。"特効薬"であるはずなのに、なぜ日本のシェアがこれほどまでに高いのだろうか?

 それは、インフルエンザに対する考え方の違いにある。

 日本以外の国では、「インフルエンザは自然治癒するウイルス感染症で、抗インフルエンザ薬は必要ない」という意見が主流だ。2009年にインフルエンザが世界で大流行した際に、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、そのガイドラインの中で、「健康な成人と子どもに抗インフルエンザ薬は不要」という見解を出した。また実際に、抗インフルエンザ薬の添付文書にも、「A型又はB型ウイルス感染患者全員に投与が必須なわけではなく、病状を十分観察して使用の必要性を慎重に検討する」という旨が記載されている。

 タミフルをはじめとするインフルエンザ薬の服用は、インフルエンザワクチンと同様、最終的には自分の判断に任される。日本の常識が世界共通のものではないことを心に留め、その必要性とリスクをしっかりと認識することが大切だ。「危険なものには手を出さない」というのも、ひとつの考え方といえるだろう。

 インフルエンザの症状が出たら、病院に行かずに、まずは家でゆっくり休むことをおすすめしたい。そうすれば免疫機能が働き始め、早い治癒が期待できるはずだ。


連載「薬は飲まないにこしたことはない」バックナンバー

宇多川久美子(うだがわ・くみこ)

薬剤師、栄養学博士(米AHCN大学)、ボディトレーナー、一般社団法人国際感食協会代表理事、ハッピー☆ウォーク主宰、NPO法人統合医学健康増進会常務理事。1959年、千葉県生まれ。明治薬科大学卒業。薬剤師として医療の現場に身を置く中で、薬漬けの医療に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を活かし、薬に頼らない健康法を多方面に渡り発信している。その他、講演、セミナー、雑誌等での執筆も行っている。最新刊『薬を使わない薬剤師の「やめる」健康法』(光文社新書)が好評発売中。

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