毎日がギリギリでの生活に Neo / PIXTA(ピクスタ)
厚生労働省の調査(2014年9月)によると、100歳を超える高齢者は全国で5万8,820人(男性7,586 人、女性5万1,234人)。調査が始まった1963年は153人だったが年々増加し、2012年には5万人の大台を超えた。日本は、世界でも類を見ないレベルの高齢社会に突入している。単純に「長寿はいいこと」と喜んでばかりもいられない厳しい現実が、あちらこちらに噴出している。
そのひとつが、経済的な問題だ。年金だけをたよりに、ギリギリの生活を送る高齢者が増加している。
企業年金の支給を受けている高齢者はまだしも、自営業者など国民年金加入者が受給できるのは、40年間年金を支払ってきたとしても月額およそ6万4,000円あまり。子ども世帯とともに暮らしているなら小遣いとして十分かもしれない。しかし、独居で持ち家もなければ生活を成立させるには厳しい金額だ。
●年金だけで暮らす独居老人
古くからの家族制度が崩壊し、昭和時代以降核家族化が進んだが、子どもが結婚などで家を出て別に所帯を持つと夫婦二人暮らしに戻る。そして、夫婦のどちらかが亡くなると独居になる。
内閣府の「平成25年版高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者のいる世帯数は1,942万世帯(平成23年現在)。そのうち夫婦二人暮らしが30,0%、そして全体の4分の1の24,2%が独居世帯だ。
その単身で暮らす高齢者の半数近くが、年収120万円以下だという。もらっている年金が生活保護水準の13万円に満たない場合、不足分を生活保護費用として受給できるという制度があるものの、活用する高齢者は一部にすぎない。その制度を知らずにいる人が多いからだ。また、当然ながら預貯金や不動産などの財産があると生活保護を受けることはできない。
年金だけで生活を送る高齢者の日常は、想像を絶する。こんな例がある。冷暖房費節約のため日中は公民館などで過ごし、食事は生きていくギリギリのラインだから栄養価など考慮する余裕はない。電気やガスなどの支払いが滞納し、ライフラインを止められることもしばしば。支払えないから医療機関を受診するにはためらいがあり、いよいよ悪くなってからの受診となる。介護サービスの料金を支払えないため、充分な介護を受けることができない人は少なくない。
「アリとキリギリス」ではないが、若い頃遊んでばかりで貯金をしなかったから貧乏暮らしをする、自己責任だ、などという社会からの冷たい視線もある。しかし、いくらまじめに働いていても、勤務先の倒産や事業の失敗、家族の病気、詐欺でだまされるなど、虎の子の貯金がいとも簡単に底をつく要因は今の日本にあふれている。
寿命が延び、ありあまる時間を自由に趣味や旅行などで楽しめる豊かな老後のイメージは、ごく一部の人しか享受できないのだ。経済大国などといわれ豊かなようで、決して少なくない数の高齢者が老後破産の憂き目に遭うとは......。
あなたの親の老後は、絶対大丈夫といえるのか? 「なんとかなる」と思っていても、なんとかならないことが多い。自分の親を老後破産をさせないためには、もらえる年金額(予測)や貯蓄額などを元に、夫婦で90歳まで生きる場合、母親が一人残され100歳まで生きる場合など、生活費+医療費・介護費を含めリアルに収支のシミュレーションをし、元気なうちから対策を講ずる必要がある。
(文=編集部)