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【連載第2回 サプリメントの天国と地獄】

テレビ通販とネットワーク通販のサプリは安心して購入できるか?

 毎日朝から晩までテレビ・ショッピングでさまざまな商品が宣伝されていますが、その中で健康や美容にかかわるサプリメントの紹介は飛び抜けて多いものの一つと言えましょう。では、テレビ通販で紹介されているサプリメントはお勧めできるものなのでしょうか。残念ながら、サプリメントを実際に製造している私の視点からすると、すべての商品が安心してお勧めできるか?は疑問です。

テレビ通販の経費や原価の構造は?

 テレビを使った販売方法には、一度に多くの視聴者に訴えることができるメリットがあります。まさにテレビというマスメディアの力です。しかし、それゆえに製品を作る側にとっては、デメリットも多いのです。関係者からお聞きした話によると、あるテレビ局の場合、販売額のうちテレビ局の取り分は6割、残りの半分を企画会社がもらい、メーカーが手にするのは最後の2割だそうです。つまり、10,000円の商品だと、テレビ局が6,000円、企画会社が2,000円、メーカーは2,000円ということになります。
 
 さらにテレビの場合は、放送後に注文が殺到して、「すぐ売れ切れました」では話にならないため、欠品がないように1万件の注文に答えられるための在庫を用意するよう求められるなど要求水準は極めて高いものがあります。もちろん売れ残りが生じてもそれはメーカーの負担です。これではメーカーはリスクを少なくするため、製品そのものには、きちんと費用をかけられません。もちろん、大手テレビ局で放映するのか、専門のテレビショッピングチャネルで販売するのか、などによってテレビ局の取り分など販売の条件はいろいろと変わるのでしょうが、メーカーの負担とリスクは相当なものと見ておく必要があります。
 
 もう一つの問題は、テレビ通販ではサプリメント商品の細かな「原材料表示」を公開しているものはなかなか見当たらないことです。サプリメントを見極める上で最も重要なのは、その商品にどのような成分がどれだけ含まれているかという情報です。にもかかわらず、その情報がないのでは、地図なしに旅行するようなものです。
 このようなテレビ通販の事情をよく理解した上で購入を決めたほうがよいでしょう。

流通コストは安いのか?

 ネットワークビジネスと言われる手法を取ったネットワーク販売についてはどうでしょうか。ネットワークビジネスは、人間関係のネットワークを利用して自分の知人らに商品を紹介して人のつながりを利用しながら販売を拡大していく流通方法です。
ネットワークビジネスの関係者の主張は、広告宣伝費がかからず、メーカーから直接消費者に製品を届けるので流通コストも削減でき、高品質な製品を安く提供できるというものです。
 しかし、ディストリビューターと呼ばれる製品を口コミで広げる会員には報酬が支払われており、それが流通コストになっています。しかもメーカーはうちの報酬は高いですよといってディストリビューターを募っているのですから、流通コストが安いという説明とは矛盾します。ディストリビューターへの報酬が含まれる分、製品の価格は割高になると考えるのが自然でしょう。


連載「サプリメントの天国と地獄」バックナンバー

田村忠司(たむら・ただし)

株式会社ヘルシーパス代表取締役、日本抗加齢医学会会員、NRサプリメント・アドバイザー(一般社団法人 日本臨床栄養協会)。1988年、東京大学工学部産業機械工学科卒業後、株式会社リクルートに入社。10年間にわたり、通信事業を中心に経営戦略、新規事業立案、マーケティング戦略立案に従事。1998年、「日本老化制御研究所」を擁する日研フード株式会社に入社。取締役経営企画室長、サプリメントの製造子会社の代表取締役社長として活動。2006年、「医療従事者が自信を持って使えるサプリメントを提供して欲しい」との医師・薬剤師からの要請に応えて、医療機関専用サプリメントの専門メーカー株式会社ヘルシーパスを設立。栄養療法に取り組む医師・歯科医師へのサポート・情報提供のため、日々、全国各地を飛び回り、楽しく仕事に取り組んでいる。著書に『サプリメントの正体』(東洋経済新報社)がある。

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