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小児の呼吸器感染症

【病気の知識】

どんな病気

 小児の呼吸器感染症の多くは、一般に風邪と呼ばれています。風邪は呼吸器の急性の感染症で、空気の入り口の鼻から始まり、のど、気管、気管支、肺といった器官にウイルスや細菌等の感染が起こり、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳、痰といった症状を現わす疾患です。

 原因の多くはウイルスで、ウイルスには多くの種類があります。従って、風邪の流行る時期には様々なウイルスによる感染が繰り返され、なかなか風邪が治らないとか、風邪がぶり返したと思えるような経過をとることがあります。

 ウイルスの中でも冬に猛威を振るうインフルエンザは気管支炎、肺炎など非常に重い症状を引き起こす可能性の高い感染症です。呼吸器症状以外でも問題になることの多い疾患ですので、詳しいことはインフルエンザの項目を参照してください。

 ウイルス以外では細菌感染やマイコプラズマ、結核があります。細菌感染では最初から感染する場合と、ウイルス感染が続いた後、二次的に感染を起こすものがあります。どちらも適切な抗生剤の使用が必要となります。マイコプラズマは、かつてオリンピックの年に流行ると言われたように4年周期流行説などもありましたが、最近はむしろ局地的に集団内(幼稚園や学校など)で流行ることが多くなりました。

 結核は最近、発症例が多くなっており、常に注意すべき疾患のひとつです。

どんな症状

 原因となるウイルスや、感染した人の体の基礎状態によって症状の出方や程度は異なります。一般的には鼻水、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛み、声がれ、咳、痰といった症状が出てきます。さらに全身症状として発熱、だるさ、食欲不振などを伴うことがあり、吐き気や下痢といった消化器症状を伴うことも少なくありません。

 また、風邪の合併症として中耳炎、副鼻腔炎なども小児の場合には多く認められますので、経過が長引いた場合や症状が重い場合は、耳を痛がったり気にしていないか、聞こえが悪くなっていないか、鼻の症状(鼻漏、鼻閉、鼻すすり)に変化がでていないかなどの注意が必要です。

 インフルエンザの症状はふつうの風邪と別格といって良く、発症から重症化するまでの時間が短く、のどの痛み、鼻汁、咳といった気道症状とともに頭痛、悪寒、節々の痛み、倦怠感といった全身症状が同時に襲ってくることが特徴的です。

 マイコプラズマは激しい咳が続くことが特徴で、多くの場合で高熱を伴って発症しています。

 結核の場合、乳幼児では呼吸器症状より発熱(高熱)や食欲の低下、不機嫌といった全身症状の方が前面に出てくるため、大人の症状とはだいぶ異なるので注意が必要です。

どんな診断・検査

 いわゆる軽い風邪といわれるような、全身状態も良好で呼吸器症状も軽度なものは検査をする必要はほとんどありません。しかし、気管支炎や肺炎、マイコプラズマ感染症のように症状が重くなるような場合には、必要に応じて胸部X線撮影や採血、痰の検査などを行い、感染の種類や程度、合併症の有無などを確認することもあります。

 さらに、感染症以外の可能性がある場合、たとえば誤嚥(食べ物などが気管に入ってしまうこと)や気胸(肺の外側に穴があき、十分にふくらまなくなる病気)、喘息などが疑われる場合にも胸部X線撮影や呼吸機能検査などを行うことがあります。最近話題になっている結核では、ツベルクリン反応や胸部X線検査などが必要になってきますが詳細はここでは省略します。

どんな治療法

 ウイルスによる呼吸器疾患では、原因治療はほとんどの場合出来ません。症状の程度にあった対症療法を行います。この際、去痰剤、気管支拡張剤、消炎酵素剤などが用いられます。中枢鎮咳剤も状況によって使用しますが、咳を必要以上に抑えると十分な病原体の排除ができなくなり、好ましくない場合もあるので注意が必要です。経過とともに症状や気道の状態も変わってくるので、その時の症状にあった薬を処方してもらうことが大切です。

 ウイルス以外の感染ではその原因病原体にあった抗生剤を使用します。なお、最近インフルエンザに対する治療薬ができ、今後の治療が大きく変わっていくことが期待されます。

どんな予防法

 呼吸器感染症の基本的な予防はうがいと手洗いです。呼吸器感染症のほとんどが飛沫感染です。病原体を多量に含む鼻汁や唾液の微粒子が、咳やくしゃみで多量に空気中に放出され、被感染者の気道粘膜等に付着することから感染が始まります。

 したがって、うがいは感染が予想される状況にあった後、速やかに行われることが望ましく、時間を経過すると病原体が粘膜内等に進入し感染を阻止することが難しくなります。手洗いも非常に重要です。

 さらに、十分な休息とバランスのよい食事、清潔な環境と適度な湿度、リラックスして安定した精神状態は、感染防御の主役である免疫能力を高める上で重要であることは言うまでもありません。

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