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新型コロナ感染症が治った後、確認のためにとPCR検査をしてはいけない!

迅速抗原検査の役割と将来の展望について

 欧米ではPCR検査に加えて迅速抗原検査の有用性について議論されている。一般的には迅速抗原検査はPCR検査よりは感度が劣るので、確実にコロナウイルスの存在を捉えるにはPCR検査が優れている。しかしPCR検査は結果が出るまでに1-2日待たなければならないのに対して迅速抗原検査は15分ほどで結果が出るというメリットがある。

 感染拡大を抑制する観点からは検査の「感度」よりも結果が出るまでの「速さ」が大事な要素であることがわかってきて、しかも検査を繰り返し行うことで感度を引き上げることができるので、安くて簡便に行うことができる迅速抗原検査にシフトする動きが起きている。今アメリカで開発中のキットは自宅で唾液を取って試験紙に浸すだけの簡便なもので、症状がない人のスクリーニング検査として期待されている。

 感度と別にもう一つ考慮に入れなければならない要素がある。それは迅速抗原検査で陽性となるのは発症から10日目ぐらいまでという事実で、この期間というのは上気道検体からウイルスを分離・同定することが可能な時期、人に感染性がある時期とほぼ一致している。したがって裏を返せば、以前にコロナと診断された人が感染性を維持しているかどうかを判断するのに利用できる可能性がある(参考。「SARS-CoV-2抗原検査に関する暫定ガイダンス:アメリカCDC」: https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/lab/resources/antigen-tests-guidelines.html )。

 ただし、現時点で日本に流通している迅速抗原キットは鼻咽頭拭いによる検体採取法に限っているので、検査をする人の感染防御のたには防護服をまとって行わなければならず、現状では誰もがいつでもどこでもできる検査ではない。また、陰性証明のための検査には健康保険や都道府県の助成制度も使えない。PCR検査を含めていまだに都道府県の認可を受けた医療機関でしか実施が認められておらず、このような足かせをかけたまま放置していることが大きな障害となっていて、民間医療機関がコロナ診療をスムーズに行えない理由の一つになっている。感染症法に縛られたがんじがらめのこの制度をいますぐ改めて、民間企業が自由に検査サービスを提供できる環境を整えなければならない。国は民間医療機関にコロナの診療を強制する前にやっておかなければいけないことが山とあるのだ。
(文=和田眞紀夫)

和田眞紀夫(わだ・まきお)
わだ内科クリニック院長
※医療バナンス学会発行「MRIC」2021年1月25日より転載(http://medg.jp/mt/)

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