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緊急事態宣言「会食による感染」は根拠なし 科学を無視した愚行だ

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根拠のない非常事態宣言に効果なし!

 1月7日、感染者の拡大を受け、政府は緊急事態を宣言した。その際、菅義偉総理は、「感染経路不明のほとんどは飲食店で起きたものであるという報告を受けている」と発言している。これは現場の認識とは相当の解離がある。

 多くの国民は、現場でどのような調査が行われているか知らない人が多いだろう。本稿では、保健所でのクラスター対策の実態をご紹介し、改善策を提言したい。

すべての症例で感染場所は特定していない

 まず、調査方法だ。PCR検査で陽性になった人がいると、医療機関から保健所に「発症届」が送られてくる。保健師は、「発症届」を元に電話で行動調査を行う。「発症届」1通を一人が受け持つ。まずは、発症から遡り、行動を聞く。濃厚接触者がいれば、さらに調査対象が増えていく。濃厚接触者に対しては、早急にPCR検査ができるように調整を行う。さらに、その濃厚接触者が陽性だった場合、その調査は延々と芋づる式に拡大していく。

 注目すべきは、濃厚接触者の定義だ。「接触したのが発症2日前以降で、相手との距離が1m以内マスクなしで15分以上会話した者、マスクを問わず長く車に同乗した者、同居者」となっている。このため、調査において、会った相手や状況を聞いても、場所を聞くことはほとんどない。原則として、全ての症例で場所は特定しない。

現場保健師の実体験から見えるいい加減な基準

 幾つか具体例をあげよう。まずは、「飲食店でのクラスター」と判断された症例だ。概要は以下の通りだ。

 従業員が2-3日前から微熱があるも出勤。別の従業員に休むように促されても、そのまま出勤を続け、お店でイベントを開催した。イベント終了後、別の従業員に発熱症状があり、保健所に電話相談し、PCR検査対象者となった。結果は陽性。行動調査を行うと、既に従業員の中に有症状者がいたこと、イベントなので従業員もマスクをしないで飲食・会話していたことが判明した。濃厚接触者に当てはまるか調査し、該当者にPCR検査を行った。結果として5人の陽性者がでた。5人の陽性者が出たのでお店の名前を公表し、心配のある人に検査を促したところ、10人以上が陽性者となった。

 ポイントは、まず「マスクの有無」を聞いていることである。「マスクをつけないで会話した人を確認し検査を行い、もし陽性なら、その人と接触した濃厚接触者に電話する・・」という作業を延々続けて、陽性者を点と点で結び、場所は後から決定付けているのである。

 この症例でもわかるとおり、ポイントとなるのは、マスクしているか、していないかである。その際、マスクの質は問わない。あくまで聞くのはマスクの有無のみである。調査において「マスクをして会っていましたか?」と尋ねた場合、「マスクをして会っていました。」という返答だと陽性者と接触があった人であっても濃厚接触者にはならない。そして、マスクをしていた場所は感染場所にはならない。

 例えば、職場でマスクしていた場合、職場の人たちは濃厚接触者には該当しないため、職場の人たちに対して追跡調査を行うことはないし、職場が感染場所になることはない。濃厚接触者に該当する人がいない場合、感染場所は不明ということになる。

 一方で、「マスクをしないで会っていました。」という返答であった場合、陽性者と接触した人々は濃厚接触者となり追跡調査がなされて、マスクをせずにその人と会っていた場所が感染場所として推測される。

 同居者に対しては、マスクをしていたか、していないかに関係なく、濃厚接触者として定義されて追跡調査が行われ、家庭内で陽性者が出た場合、感染場所は家庭内となる。

 別の症例を記す。「体調不良を訴え、検査したところPCR陽性と判明。行動調査をしたところ、「一人暮らしでマスクして出勤。ランチも一人で食べていた」という。この場合、「濃厚接触者なし」となる。陽性者については事業所に報告し、10日間の隔離療養となるが、職場の同僚を検査することはない。

 心配した事業所からは、保健所に「社員を検査しなくて大丈夫か?」と相談される。保健所からは「濃厚接触者該当者がいないため保健所経由での検査対象にはならない」と返答するしかない。それでも心配した会社は自費で社員の検査を実施する。結果的に3人の陽性者がでた。病院から発症届が提出されると共に、事業所から保健所に今回の保健所の対応について疑問と苦言の連絡が入る。現在の調査方法では、最初の陽性者と後者3人のどちらが先に感染したかは不明であると共に、全員マスクをしていたため、このケースは「感染経路不明」と分類される。

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