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【 シリーズ「本能で楽しむ医療ドラマ主義宣言!」 第19回】

『ブラックペアン』二宮和也は揺るがないが、東城大も帝華大も終わっている!

現実とはかけ離れた医療ミスが多すぎる!

 それにしても、今回は医師たちが喧嘩ばっかりしていましたね。東城大では患者のペニシリンアレルギーのことを理解していないし、最終的に、医師の指示ミスを看護師のせいにしていました!この大学、終わってます。帝華大も、自分の術前準備の悪さゆえのオペの不成功を、隠蔽しようとしていました。

 東城大の院長にいたっては、将来の自分の天下りのために患者情報を漏洩し、患者の命よりカエサル治験の成功を選ぼうとすらしました。どうしようもない医師ばっかりで、見ていて嫌になってしまいました。

 今までは、俳優陣のオペの手さばきも、術中の画像も本物さながらで、日本の医療ドラマもレベルが上がってきた!と思ってみていましたが、今回は人間模様を重視したためか、カエサルを使用したオペシーンには、どうにもこうにも説明のつけようもないお粗末な描写でした(笑)!左心房の血栓は最後、竹内君が攝子で取り出す始末。残念!

 ブラックペアン、7回目までに何回の医療ミスがあったのでしょうか?ま、これがドラマ、ということです。

 点滴の指示にしても、基本的に医師が薬剤部にオーダーしない限り、看護師はモノ自体の準備すらできません。今回、「ペニシリンとヘパリン点滴しておいて」と口頭で医師が看護師に指示を出していましたが、現実には不可能です。もし、偉い先生に口頭で指示されたとしたら、看護師は若い医者を捕まえてオーダーをしてもらわないといけません。口頭指示で薬が出てくるのは緊急時のみです。

 そして、点滴を刺す時点でも、患者と指示があっているかの確認が数回必要になります。バーコードでの一致や看護師のダブルチェックなどです。いくら医療のIT化が進んでも、ITを使用するのは人間ですので、人為的?人道ミス(医療事故)は起こりえるのです。これは危機管理のモデル、<スイスチーズモデル>として知られています。

 スイスチーズ(=関所)には穴が開いていますが、何枚も重ねるともちろんその穴が塞がり、その関所機能は強化されるはずなのですが、運悪く、その穴が重なり合って開通してしまうことがある。そこをすり抜けて医療事故が発生する場合がある、という考え方です。

 よって、医療事故を防ぐためにはこの関所の数を増やすしかないのです。臨床ではこの関所は人による確認作業になりますので、ダブルチェック、トリプルチェック・・・ということになっていきます。

 以前は、ほとんどの事柄が医療行為を指示した医師の管理責任と言われていましたが、今は、指示を見間違えた医療ミスなどは、看護師の責任も問われるようになってきました。

 責任の所在を明確にすることも関所の役割を果たしているのです。今回のドラマのように医師が看護師にミスをなすり付けるなんてことは、まずありえません。だいたい、女を敵に回すと怖いことくらい常識です(笑)。

 ブラックペアンも残すところあと3回です。東城大に戻ってきたニノ。父上と佐伯教授の関係、集めてきたお金の意味などがあきらかになっていくのでしょうか。私の周りでは、胸の残されたペアンは残さざるを得ない状況だったのでは?なんていう意見まで出ております!
(文=井上留美子)


『ブラックペアン』二宮和也は揺るがないが、東城大も帝華大も終わっている!の画像2

井上留美子(いのうえ・るみこ)
松浦整形外科院長
東京生まれの東京育ち。医科大学卒業・研修後、整形外科学教室入局。長男出産をきっかけに父のクリニックの院長となる。自他共に認める医療ドラマフリーク。日本整形外科学会整形外科認定医、リハビリ認定医、リウマチ認定医、スポーツ認定医。
自分の健康法は笑うこと。現在、予防医学としてのヨガに着目し、ヨガインストラクターに整形外科理論などを教えている。シニアヨガプログラムも作成し、自身のクリニックと都内整形外科クリニックでヨガ教室を開いてい。現在は二人の子育てをしながら時間を見つけては医療ドラマウォッチャーに変身し、joynet(ジョイネット)などでも多彩なコラムを執筆する。

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