遂にAIが小説を書いたが……(depositphotos.com)
AIは小説も書く。AI小説はベストセラーになりえるのだろうか?
古今東西のベストセラーは?
さて、古今東西、最も発行部数の多い書物は何か? 『聖書』の6億3300万部(出典:国際聖書協会)だ。ミゲル・デ・セルバンテスの『ドン・キホーテ』が5億部、J・K・ローリングの『ハリー・ポッター』が4億5000万部、チャールズ・ディケンズの『二都物語』が2億部が追走する(出典:The all-time most popular books in the world revealedなど)。
日本の出版物ランキングも見よう――。1位が村上春樹『ノルウェイの森』で1000万部、2位が黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん 』で580万9000部、3位が松下幸之助『道をひらく』で520万部、4位がJ・K・ローリング『ハリー・ポッターと賢者の石』で510万部と続く(出典:『世界ー受けたい授業SP』ベストセラーランキング50など)。
世界でも日本でも、名作ベストセラーは青春のワンシーンを熱く思い出させる。人生を滋味で癒してくれる。AIが書いた小説がベストセラーになる日は来るのか?
AIが書いたSF小説が星新一賞の一次選考を通過
旧聞に属するが、2016年春にAIが作った小説2点(約3000字)が応募総数1449編の中から第3回・星新一賞(日本経済新聞社主催)の一次審査をパスし、選考に残った。(ただし、最終選考までは残らず)。
応募したのは小説創作ソフト「きまぐれ人工知能プロジェクト『作家ですのよ』」の仕掛人である公立はこだて未来大学副理事長の松原仁教授。事始めは2012年、星新一作品を管理する「星ライブラリ」代表の星マリナ氏が松原教授に「星新一の作品を使ったAI小説」の実現性を打診したことからプロジェクトがスタートした。
数年来、松原教授は学生や研究スタッフと試行錯誤を繰り返して来た――。
まずAIに星新一の小説1000作品以上を読み込ませ、ストーリーやプロットは松原教授がプログラミング言語を書いて指示した。その後、AIが機械学習(ML)と深層学習(ディープラーニング)を重ねつつ、星の小説にありそうな文章や頻出パターンから数十万もの大量の作品群をアウトプット。その作品群の中から「読んでもっともらしい作品」を選んで応募したところ、2作品が一次審査を通過したのだ。
AIのお家芸は、量産とスピードと模倣だ。松原教授によれば、一次審査をパスした作品は文学的に高い完成度は望めないものの、「少なくとも日本語として読める」評価を得たので、研究の大きな成果につながった。だが、課題は山積している。
ちなみに2018年2月に発表された第5回 ・星新一賞では「車載AI」が主人公の作品が一般部門グランプリを獲得している。