米国ではイヌのインフルエンザが流行中(depositphotos.com)
ご存じのように今シーズンは、インフルエンザの流行が止まらない。
厚生労働省によれば、2月4日までの1週間に全国の定点医療機関を受診した患者数は26万8811人となり、一医療機関当たり54.33人とこれまでの最多を更新。昨年(2017年)9月からの累積患者数は、すでに1100万人を超え、まだまだ増加しそうな勢いだ。
例年なら2~3月にかけて流行する「インフルエンザB型」が、早くから主流となっているのが今シーズンの特徴だ。さらに最近は「A香港型」の検出も増えてきた。流行株の入れ替わりで、複数回の罹患リスクが高まる。いちど罹った人も油断は禁物だ。
ところで、私たちに最も身近なペットであり家族であるイヌも、インフルエンザに罹ることをご存じだろうか? 海の向こうのアメリカではここ数年、一部地域でイヌのインフルエンザが流行し続けているという。
新種のウイルスで感染率が高い
米コーネル大学動物衛生診断センターのAmy Glaser氏によれば「これまでにイヌのインフルエンザ感染が報告されているのはフロリダ州、ケンタッキー州、テネシー州、オハイオ州、カリフォルニア州の一部地域」とのこと。
イヌが感染するウイルスとして同定されているのは、「H3N8型」と「H3N2型」の2種類。いずれもインフルエンザA型ウイルスの亜型だ。
H3N8型はもともとウマのインフルエンザウイルスだったものが、イヌへ感染して変異したと考えられ、2004年にアメリカで最初の症例が報告された。H3N2型は2007年に韓国で見つかったもので、アジア広域の野鳥が保有する「鳥インフルエンザウイルス」がイヌに伝播した亜型と考えられている。
H3N2型は2015年に米国で1000匹以上の感染が報告され、それ以後、現在に至るまで流行が続いているのだ。
これらのウイルス型は、比較的、新しいことから、免疫を持つイヌはほとんどいない。前出のGlaser氏によると「アメリカ国内のイヌは、ほぼインフルエンザウイルスに曝露したことがないため、曝露するとすぐに感染して発症してしまい、周りのイヌにも一気に広がりやすい」という。
米国獣医師会(AVMA)会長のMichael Topper氏によれば、感染経路は「既に感染しているイヌとの接触のほか、ウイルスが付着した餌や飲み水、おもちゃを介する可能性がある」という。
その症状は、ヒトと同様だ。咳やくしゃみ、鼻水、倦怠感、発熱、食欲不振のほか、嘔吐や下痢が見られることもある。ほとんどの場合は軽症のまま2~3週間以内に回復するが、重症例では、二次性の細菌感染によって肺炎を起こす場合もある。そして重症化した場合は、8〜10%ほどが死に至る。
Topper氏によると、治療は二次性の感染や肺炎・脱水の有無に応じて決定される。妊娠しているイヌや年を取ったイヌ、呼吸器や免疫系に基礎疾患を抱えるイヌに対しては、こうした状態を考慮した治療が行われる。
前出のGlaser氏は「もしイヌがインフルエンザに感染したら、他のイヌへの感染を避けるために21日間は隔離すべきだ」と忠告している。