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「ロキソニン」を飲み続けて血圧が上昇! 非ステロイド薬の副作用を軽く考えると……

関節炎患者の高血圧治療で亡くなる人が減る!

 非ステロイド性抗炎症薬の服用と血圧への影響をが懸念されるのには、理由がある。膝や股関節の痛みに悩む人たちは少なくないが、痛みを和らげるためにロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬を飲んでいる。

 関節の痛みを引き起こす大きな原因のひとつは「体重の増加」だ。体脂肪が多ければ、高脂血症や高血圧症である割合も高い。これらが遠因となって、関節の痛みがある人は心疾患もあるケースが多いのだ。

 その結果、鎮痛薬で痛みは和らげても、心臓に負担をかけてしまうことになる。アメリカでは、変形性関節症患者の高血圧症の有病率が4割を超える。関節炎患者の高血圧を治療すれば、脳卒中による死亡を年間で7万件以上、冠動脈疾患による死亡を6万人以上、防ぐことができるとの推計も報告されている。

非ステロイド性抗炎症薬にも必ず副作用が

 ロキソニンやボルタレンなどの一般的な鎮痛薬は、医師の処方がなくてもドラックストアで入手できる。だが、「血圧上昇の危険性がある」「心血管疾患のある場合は注意すべき」と認識している人はどのくらいいるだろうか?

 ステロイド系抗炎症薬のもつ副作用の怖さに比べて、「副作用が少ない」「手軽に入手できる安全な薬」のイメージのある非ステロイド性抗炎症薬だが、薬は必ず副作用がつきものだ。

 そして、以前にも解説したが鎮痛薬は万能ではない。たとえば、ロキソニンは腰痛治療に効果がない――ことはアメリカの治療ガイドラインで発表されており、ロキソニンなどを多用すると頭痛になることも報告されている。

参考1:ロキソニンは腰痛を悪循環させる! 米国の最新ガイドラインは<腰痛に薬はほぼ効果ナシ>
参考2:薬剤の使用過多による頭痛!ロキソニンやトリプタンなどの頻回使用で頭痛に

 誰でも手軽に入手できる薬ほど、「いつ、どのような時に、どのくらい飲むべきなのか」という投薬の原則を知っておくことは大切だ。

 本来であれば「薬」は、医師の診察を受け、薬剤師による説明を受けてから飲むものである。それが自己判断で服薬できる現代、今回の論文は、薬の効果と副作用を一考させられるものだ。
(文=三木貴弘)

三木貴弘(みき・たかひろ)

理学療法士。日本で数年勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の理学療法を学ぶ。2014年に帰国。現在は、医療機関(札幌市)にて理学療法士として勤務。一般の人に対して、正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。お問い合わせ、執筆依頼はcontact.mikitaka@gmail.comまで。

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