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【シリーズ「DNA鑑定秘話」第56回】

新説! ホモ・サピエンスの起源は定説より10万年も遡る<30万年前>だと判明

新説 ホモ・サピエンスの起源は、 20万年前ではなくさらに10万年も遡る30万年前だった!の画像1

人類の起源は何万年前?(depositphotos.com)

 現生人類のホモ・サピエンスの起源は、20万年前とする定説より、さらに10万年も時代を遡る30万年前だったとする研究論文が英科学誌『Nature』に発表された(AFP NEWS 2017年6月8日)。

 発表によれば、独マックス・プランク進化人類学研究所の古人類学者ジャンジャック・ユブラン氏らの研究チームは、モロッコ中央部の都市マラケシュに近いジェベリルーにある先史時代の野営地から、古代人類5人の頭蓋骨と骨の断片、狩猟や食肉処理に使われた石器を発掘し、年代測定を行なった。

 今日まで最古とされているおよそ19万5000年前の化石が見つかったアフリカ東部のエチオピアは、人類進化のルーツの地とする「エデンの園」定説につながっている。

 だが、今回の発見が契機になり、人類の進化の系統図が大きく書き換えられ、既に絶滅した一部のホモ属が人類の祖先候補から除外される可能性があるという。

化石や人骨の年代を推定できる放射性同位体

 このような化石・人骨・遺跡の絶対年代を測る考古学的・自然科学的な解析法、それが年代測定法だ。年輪年代法、縞粘土年代法、放射性炭素法、フィッション・トラック法、熱ルミネッセンス法などがある。

 動植物の遺骸を測定する放射性炭素年代測定(radiocarbon dating)は、地球の生物圏(バイオスフェア)に存在する放射性同位体の炭素14 (14C) の存在比率が1兆個につき1個とほぼ一定であることを根拠にした年代測定法。C14年代測定とも呼ぶ。

 炭素14の存在比率は、動植物の内部では死ぬまで一定だが、死後は新しい炭素の補給が止まり、存在比率が下がる。

 また、炭素14 は、約5730年の半減期でβ崩壊によって電子を放出して減少するため、サンプルの炭素同位体12/14比から、化石や人骨の年代を推定することができる(地層科学研究所science-059.php)。

 炭素同位体12/14比から年代を推定できるのはなぜだろう?

 炭素は土壌を含む上部地殻および流体地球に広く存在し、酸素、水素、窒素などと共に地球上の生物圏(バイオスフェア)の生命活動にとって重要な役割を担う。

 自然界の炭素原子には12C、13C、14Cの3同位体が存在し、安定同位体である12Cが約99%、安定同位体である13Cが約1%、放射性同位体である14Cが約1兆分の1%を占める。

 食物連鎖の生産者である植物が光合成によって炭素同化を行う時、質量数が小さく軽い12Cの方が、13Cや14Cよりも植物の体内に取り込まれやすい。

 また、地球の気候変動に伴う炭素同位体の変化は、食物連鎖の生産者である植物にも、消費者である動物にも記録される。つまり、生物が死滅し化石になると、化石の炭素同位体は、代謝を行っていた時代の生物の栄枯盛衰や来歴を克明に記録・保存する。

 ただし、先述のように、放射性同位体である14Cは、約5730年の半減期でβ崩壊によって減少・消滅するため、14Cは太古の地球環境の記録としては残りにくい。

 一方、安定同位体である12Cと13Cは、過酷な高温高圧に晒されない限り、原子核は安定したまま変化しない。

 したがって、安定同位体である12Cと、放射性同位体である14Cの炭素同位体12/14比を調べれば、化石や人骨の年代を推定できることにつながるのだ。

 このような安定同位体である12Cと13Cの比率変動は、数億年前の全球凍結事件(スノーボールアース)や顕生代の海洋無酸素イベントなど、地質時代の海洋の復元や大量絶滅の解明にも活用されている。


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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