AIの機械学習によるイノベーションは、数奇な未来を引き寄せるのか?
O'Regan氏は「機械学習がもたらす新しいAIソフトウェアは大きな前進だ。医師は、既存の患者データだけに依存せずに、AIソフトウェアが提示する高精度な解析データに基づいた確定的な判断を下せるので、心臓病の治療法が変わるかもしれない」と説明する。
LMSのTim Dawes氏は「放射線科医は、最もリスクの高い患者を特定するために、経験に頼った手作業の検査法だけで長時間を浪費している。AIの機械学習によるイノベーションは、心不全(肺高血圧症)の自動予測の新たなアプローチになる」と期待を込める。
AIの機械学習は、すでにがんや脳疾患の研究に役立っているが、心臓の3D画像の解析は困難を極めているので、AIソフトウェアは、心臓病における画期的な臨床研究の端緒を押し拓くだろう。
O'Regan氏は「次のステップは、このAIソフトウェアを活用し、今回のHammersmith病院のデータとは別の病院のデータを検証しなければならない。究極の目標は、寿命予測だけでなく、患者別の最適な治療法予測を行うAIソフトウェアを開発することだ」と強調している。
AIテクノロジーが加速し、ビッグデータが爆発する近未来。AIソフトウェアのアルゴリズムがより進化し、AIの寿命予測技術がブレークスルーしたらどうなるだろう?
たとえば、「デス・カウンター(寿命予測分析計)」の新発明や「死亡予測保険」などの珍サービスも出現するかもしれない。
そんな夢物語のような次代が到来したなら、何歳の時に、どのような原因で、どのような症状や病態を招いて死亡するかが予知できるのだろうか? 人生の見え方も、人間の生き方も大きく様変わりするのだろうか?それが幸福な正夢なのか、恐怖の悪夢なのかは、未来に問い質す他ない。
(文=佐藤博)
佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。