<不可解な遺伝>はここに起因している?
●親が認知症になると子どもが認知症になるリスクが、そうではない人に比べて1.67倍に高くなった。
●特に「親が80歳未満」で認知症と診断されていた場合、子どもの発症リスクは2.58倍に上がった。
●しかし「親が80歳以上」で認知症と診断された場合は1.01倍と、有意な差はなかった。
●親が「80歳未満」で認知症と診断されていた場合、被験者の診断年齢と親の診断年齢との間に強い相関が示されたが、「80歳以上」の場合は有意な関係性はなかった。
●脳MRIで認知症が認められなかった1161人の被験者の親の認知症歴は、「脳灌流の低下」「白質病変」「微小出血」と関連していた。
●発症したのが「父親か母親かによる認知症リスク」に差はなかった。
つまり「親が80歳未満」の若いうちに認知症になった場合は、子どもが認知症になるリスクが有意に高くなる。また、親が認知症を発症した被験者には脳灌流の低下や小さな血管病の傾向が見られ、もしかすると不可解な遺伝はここに起因しているのかもしれないという。
遺伝よりも生活習慣病のほうが危ない
「親が若い時に認知症になると子どもの認知症リスクは2.58倍」――。この結果をどう受け止めればよいのだろう?
現在、認知症で遺伝が疑われているものに「家族性アルツハイマー型認知症」がある。ただし64歳よりも前に発症する「若年性アルツハイマー型認知症」の1割に過ぎず、実際に遺伝子異変が明らかになったケースはさらに半分程度といわれている。
これはレアケースでしかなく、今のところはほとんどの認知症にはっきりとした遺伝性は認められていないのだ。
既存の研究から認知症のリスク因子として挙げられているのは、「年齢」「頭部外傷」「生活習慣病」「喫煙」「社会的・経済的要因」「遺伝的要因」「うつ病」「難聴」「視力低下」など多岐にわたる。
なかでも強いリスクでありながら、改善も可能なのが「生活習慣病」。
中年以降の「高血圧」「糖尿病」「肥満」などだ。それに対して「野菜や果物、魚をたくさん食べる食習慣」「週3日以上の有酸素運動」「社会的な繋がりを持ち続けること」など、認知症を予防できるライフスタイルについても明らかになってきた。
今や80歳以上の4分の1が認知症になるといわれ、身内に誰も認知症患者がいないほうが珍しい時代だ。遺伝的要因についてはさらなる究明が必要だが、まずは認知症になりにくい生活習慣を守ることが前向きな姿勢ではないだろうか。
(文=編集部)