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【連載「頭痛の秘密がここまで解き明かされてきた」第16回】

梅雨と片頭痛の関係〜気圧に5〜10hPaの変動があると頭痛が誘発される

天候(梅雨)と片頭痛の関係〜気圧に5〜10hPaの変動があると頭痛が誘発されるの画像1

天候と片頭痛の関係はかなり解明されてきている(depositphotos.com)

 新緑の季節が終わって夏に向かっていくに従って、みなさんの服装もクールビスになってきたのではないでしょか。

 でも、少し待ってください。6月は「梅雨」の季節です。梅雨は普通の人でも少し憂鬱になる季節ですよね。しかし、片頭痛持ちの患者さんには、普通の人以上に厄介な季節なのです。

 ということで、今回は「天候と片頭痛」についてお話したいと思います。

気圧に5〜10hPaの変動があると頭痛が誘発される

 片頭痛は「気象病」と呼ばれることもあるぐらい、梅雨前線、低気圧、台風など天気や気圧と関連することが知られています。特に雨が降る前に低気圧が来ると、片頭痛になるという方が多数います。片頭痛と天候の変動(気圧の変化、温度変化、湿度変化)は、片頭痛の誘発因子としてよく知られています。

 最近の論文では、片頭痛と気圧の変化についての報告がなされています(注1)。その報告では、平年の平均気圧を1013 hPa(ヘクトパスカル)とすると、5〜10hPaの変動があると、頭痛が誘発される割合が最も多くなるというものでした(注2)。ただし、気圧に敏感な人は、それ以下の変化でも頭痛が誘発されるようです。

 また温度変化では、前日からの気温差が大きいと片頭痛を起こしやすいという報告(注3)や、湿度が上昇すると発症しやすい報告などがあります。実際、細胞レベルの研究でも、皮膚細胞の一種であるケラチノサイトが気圧の変動にあわせてカルシウムシグナルを放出している(注4)など、天気、気圧、湿度と、皮膚細胞は、外気の気圧や湿度を感知している可能性もあります。

 このように気圧の急激な変化によって頭痛が起こると考えると、飛行機に乗る時にも、頭痛が誘発される可能性がありますし、高い山に登る時(高山病=2000m以上の山に短時間に登った時に、頭痛、嘔吐、めまいなどの症状を伴う病気)にも頭痛が起こる可能性がありますから、頭痛持ちの人は注意が必要です。

夏場のほうが片頭痛発作を起こす頻度が多い

 「日本の季節」という指標で見ると、5〜10月に片頭痛の頻度が多く、特に9月が多いという調査があります(注1)。実際、6月は梅雨の季節で低気圧が居座る季節で、9月は台風の多い季節です。6月と9月を比べると、台風による気圧変動のほうが大きいので、9月のほうが多いようです。

 一方、冬では、2月に最も片頭痛が多く、最低気温や冷たい風の強い季節と片頭痛の関係が考えられます。また、1日24時間の間でも、朝4〜8時に頭痛が最も頻発することが報告されています。これも1日の中で朝が最も温度が下がることと関連しているのかもしれません。

西郷和真(さいごう・かずまさ)

近畿大学病院遺伝子診療部・脳神経内科 臨床教授、近畿大学総合理工学研究科遺伝カウンセラー養成課程 教授。1992年近畿大学医学部卒業。近畿大学病院、国立呉病院(現国立呉医療センター)、国立精神神経センター神経研究所、米国ユタ大学博士研究員(臨床遺伝学を研究)、ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイトなどを経て、2003年より近畿大学神経内科学講師および大学院総合理工学研究科講師(兼任)。2015年より現職。東日本大震災後には、東北大学地域支援部門・非常勤講師として公立南三陸診療所での震災支援勤務も経験、
2023年より現職。日本認知症学会(専門医、指導医)、日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)、日本神経学会(神経内科専門医、指導医)、日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)、日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など幅広く活躍する。

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