炭酸飲料などの糖入り飲料の肩身が、ますます狭くなりそうだ――。
すでにこれらの飲料は、肥満や糖尿病のリスクになることが知られているが、WHO(世界保健機関)は今年10月、糖分の多い飲料に対する課税、通称「ソーダ税」の各国への導入を勧告した。
米国やメキシコの一部の州では、すでに実際にソーダ税が導入されている。WHOも世界的に増加している肥満や糖尿病への対策として、課税強化を各国に呼びかけたのだ。
さらに今回、糖尿病の前兆を引き起こす可能性が高いことも報告された。
米タフツ大学/米国農務省(USDA)ヒト加齢栄養学研究センターの最新研究報告(『Journal of Nutrition』11月9日オンライン掲載)によれば、砂糖入り炭酸飲料を毎日1缶飲んでいる人は、糖尿病前症を発症するリスクが劇的に上昇する。
糖尿病前症とは、インスリンの作用不足で起きる2型糖尿病の「前兆」をさす。細胞が砂糖を分解し、それをエネルギーに変えるに際してはインスリンが必要とされる。
だが、摂取糖分が多すぎる場合、細胞が適正に反応せず、インスリン抵抗性が始まってしまう。
このインスリン抵抗性の兆候こそが「血糖値の上昇」に他ならない。完全な糖尿病にはなっていない状態を文字どおり「糖尿病前症」と呼ぶ。
同研究センターのNicola Mckeown氏によれば、これはまだ「元の状態に戻れる(戻せる)段階」だという。
<戻りたい>ならドリンク選びから
「砂糖の摂取量を減らせば元に戻ることができる。毎日の砂糖入り飲料を控えること、それは糖尿病への移行を防ぐ<修正可能な食事因子>といえる」
今回の研究では、約1700人の中年成人のデータに基づいて解析が行なわれた。このデータは、心疾患に寄与する因子に関して複数世代の傾向を観察しているフラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)によるもの。
注目の解析結果はこうだった。約350mlの砂糖入り飲料を平均週6回(つまり日曜以外の職場などで1缶)飲んでいる層は「最も摂取量が高い群」と区分けされ、他の因子を考慮しないとした場合、その糖尿病前症リスクは46%も高かった。
その先で待ち構える2型糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が正常よりも多くなる生活習慣病だ。初期段階は自覚症状もほとんどないが、高い血糖値を放置しつづけると徐々に全身の血管や神経が侵され、さまざまな合併症を引き起こす。
この無視できない数値結果に対し、当然ながら米国飲料協会(ABA)が噛みついた。曰く、なにも清涼飲料に含まれている砂糖ばかりが<糖尿病前症の危険因子>になっているわけではないだろう、というわけだ。