結石を粉々にしてスルッと出す体外衝撃波結石破砕術の威力!
しかし、蛇の道は蛇だ。ジェットコースター治療法の有効性の真偽は揺れる。泌尿器専門家の見解は大きく割れている。
ジョージア州の泌尿器科医師 ジョン・パッタラス氏は、急激な動きが結石の通過を助けるが、結石は腎臓の下部にあることが多く、結石が尿管を通過するには、集合管の真ん中まで上がらなければならないと反論する。
ニューヨーク市の泌尿器科医師エリザベス・カバラー氏も、概念的には理解できるが、やや極端な療法に思われるので、患者に勧めることはまずない」と躊躇を隠せない。
腎臓結石は、メタボリック症候群など、以下に列挙した複数の要因によって尿中にカルシウムが結晶化し、腎臓から膀胱に至る尿路に結石が沈着するために、尿路が詰まる疾患だ。結石が大きくなればなるほど、激しい排尿痛、血尿、腰痛、発熱などを伴う。
腎臓結石の約60%は、原因不明の特発性結石症だ。食生活、ストレス、遺伝的体質はもちろんだが、 内分泌代謝異常、原発性副甲状腺機能亢進症、尿細管性アシドーシス、クッシング症候群、ミルクアルカリ症候群のほか、カルシウム代謝異常、シュウ酸代謝異常、尿酸代謝異常(痛風)、シスチン代謝異常(シスチン尿症)など様々な要因が複合化して発症するとされる。
最近の治療では、体外から衝撃波を当て、結石を砂状に小さく破砕し、尿管から膀胱に排泄させる体外衝撃波結石破砕術(ESWL)を行う。直径5mm以上の結石を破砕する外科治療だ。
ただし、結石のある場所や固さに個人差があるので、痛みの強い場合や高度な水腎症の場合は、4立方ミリ以下でも破砕する。治療は、症状によって1回の治療で砕ききれない時は、数日から2~3カ月かかる。治療中に強い鈍痛があれば、鎮痛剤を処方する。
だが、お腹を切らずに治療でき、副作用や後遺症のリスクはほとんどない、それがESWLのメリットだろう。
ちなみに東京腎泌尿器センター大和病院での治療実績 (1980年~2010年)によれば、結石破術数28,894件、患者1人当たり平均破砕回数1.14回、治療費約90,000円(健康保険)となっている。
米国では、毎年30万人以上が腎臓結石のために救急を受診する。救急コストはおよそ2160億円に上る。発症率は男性11%、女性6%。東京大学医学部泌尿器科科学教室のウェブサイトによると、日本人の発症率は、男性9%、女性3.8%だ。決して稀な疾患ではない。