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【シリーズ「病名だけが知っている脳科学の謎と不思議」第14回】

「川崎病」は年間約1万5000人が発症!「子どもの心筋梗塞」ともいわれる川崎病の症状・原因は?

川崎病の原因は?

 2007年、理化学研究所横浜研究所のグループは、川崎病の発症と重症化に遺伝子ITPKCが関与することを発見。2009年、順天堂大学のグループは、ブドウ球菌や桿菌などの複数の細菌感染が主因のため、抗菌薬の投与が有効であると発表した。

 また、2011年に中央アジアで発生し、北太平洋を横断するジェット気流の循環との相関関係を示す研究発表があった。2014年には、カンジダ類を多量に含む中国東北部からの強風が関与している研究も発表された。

 さらに今年1月21日、米国の科学雑誌『PLOS ONE』によれば、理化学研究所統合生命医科学研究センターの共同研究グループは、12番染色体にあるORAI1遺伝子の配列に関わるSNP(1塩基多型)が川崎病の発症と深く関連する事実を初めて究明した。

 このような数々の研究成果で明らかなように、複数の病理学的・遺伝学的な要因が感染症を引き起こし、全身の血管や動脈への自己免疫が誘発される。その帰結として、血管壁が好中球、マクロファージ、リンパ球の炎症細胞によって破壊されるため、冠動脈の拡張や四肢末端の浮腫が生じる。それが、川崎病の発症の機序と考えられる。

 いたいけない子どもたちへの慈愛と深い献身の決意に支えられ、川崎病の克服に捧げた天与の科学者、川崎富作。それは、子どもの手をとり、子どもに語りかけ、完治の道を模索し続けてきた男の半生だ。「医療は温かく、医学は厳しく」を信念に、捲まず撓まずひたすら臨床に携わってきた苦労人が刻んだ血の轍(わだち)でもある。

 今も、その温和な笑みと眼差しは、励ましたり、叱ったり、忠告したりしながら、孫のような世代の青年医師たちに静かに注がれる。そのチャキチャキの江戸っ子ぶり、面倒見のいい親分肌は、半世紀以上たっても変わらない。

 「私の仕事が1人でも幼い子どもの助けになればと、心に銘じて生きてきた。千里の道も一歩から。百里を行く者は九十里を半ばとする。まだまだ、道半ば。ネバー・ギブアップだね!」


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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