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洗い流さない「手の除菌剤」は安全か? 尿から想定以上の「殺菌成分の濃度」が!?

手洗いで最も肝心なのは時間をかけてゴシゴシ洗う

 一方、米国疾病管理予防センター(CDC)の見解は、「感染症の発症・拡大を予防する」という意味では「水と石鹸での手洗いも最善の方法の一つである」という、なんとも冷静なもの。加えて「手洗いができない状況」では「アルコールを60%以上含有する除菌剤を使用すること」も推奨している。

 前出のJanet Woodcock氏も、手の除菌剤をめぐる今日の一般的状況を、「現在の消費者は感染症リスクの比較的少ない状況でも頻繁に除菌剤を使用しているように思えてならない」と評している。

 さらにNYCの米国レノックス・ヒル病院のRobert Glatter氏の見解に至っては、ある意味、当たり前過ぎてそのぶん、むしろ安心感さえ覚えてしまう。同氏は「今回のこのような審査規則は製品の安全性ばかりか、実際の効果をより明らかにするためにも重要だと思います」との前提に立ち、こんなコメントを寄せているのだから。

 「手洗いにおいて最も肝心なのは、時間をかけてゴシゴシ洗うという単純かつ機械的な動作です。特に細菌や汚れが溜まりやすい爪のなか、指のあいだに注意することが大切です。それは除菌剤や石鹸などを使う場合も同様で、最低20秒以上は手を擦り続けるのが賢明でしょう」

 トイレの用足し後も毎回洗わない文字どおりの手抜き派から、潔癖症寸前の慎重派まで手の除菌対策ぶりはそれこそ十人十色だろう。前者のようなズボら派の部屋にも、「消臭&除菌」「除菌&殺菌」などのW効果を謳うなんらかの製品が常備されているはずである。

過敏な除菌剤信仰は肌荒れを生む

 むしろ気をつけたいのは、上記のGlatter氏の助言を読んで、「専門家も甘い甘い」とやや冷笑気味に受け止めた後者タイプの方のほうかもしれない。人一倍の除菌&殺菌マニア(?)の場合、外部の刺激から肌を守ってくれる「常在菌」まで削ぎ落としてしまっている可能性が濃厚だからだ。

 何事も度が過ぎては逆効果、過度な除菌や殺菌は抵抗力も免疫力も低下させ、むしろ感染症をおこしやすい肌を生んでしまう。実際、昨今の過剰な除菌ブーム以降、病気やアレルギーになる子どもが増えているという報告もある。

 大人でも肌表面のバリア機能を担う常在菌が削がれてしまっては防御力は低下し、結果「肌荒れ」につながってしまう。ウェットティッシュやデオドラントシート特有の清涼感や香りが好きという方も、使用後に肌がぴりぴりしたら要注意。肌荒れしやすい方がこれらの製品を使うことは控えられたほうが賢明だ。

 街の飲食店で出てくるおしぼりやナプキンにも「抗菌加工」が施されているので注意したい。風呂好きに象徴される日本人の清潔嗜好は独特だが、やりすぎは慎んだほうが肌のためには良さそうだ。
(文=編集部)

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