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【シリーズ「DNA鑑定秘話」第34回】

DNA鑑定秘話〜産地偽装を暴く! 中国産ウナギと称して「絶滅危惧種」のヨーロッパウナギが混入

ウナギの正体を暴くDNA鑑定

 ウナギのDNA鑑定は、どのように行われるのだろう?

 「WEDGE Infinity」(2015年7月19日)によれば、北里大学海洋生命科学部の吉永龍起准教授は、市販されているウナギの蒲焼きをDNA鑑定し、2011年から鑑定結果を公表している。吉永准教授によると、スーパーや牛丼チェーンで販売している中国産ウナギを対象に調査し、初年度はサンプル数がわずか28検体だったが、昨年は170検体を鑑定した。

 鑑定の手順はこうだ。まず買ってきた蒲焼きの写真を撮り、重さを測り、背開きかどうかなどウナギの捌き方を確認。身を2〜3mm角の大きさにカット。PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)を用いてDNA配列を解析する。PCR法はDNAを増幅する解析手法で、微量なDNA溶液を使い、特定のDNAだけを短時間で増幅できるのが大きなメリットだ。

 次に世界で19種の亜種が確認されているウナギのDNA配列と照合し、商品にどのウナギが使われているのかを確認する。たとえば、蒲焼きの切れ端が多いひつまぶしには、複数の品種のウナギが混入している場合があるので、検体ごとに詳しく解析している。

 グリーンピース・ジャパンや吉永准教授などのDNA鑑定が功を奏して、中国産ウナギに絶滅危惧種のヨーロッパウナギが使用されていた事実が明らかになった。さらに、ワシントン条約による輸出規制が追風になり、スーパーや商社の自主規制も強まったために、ヨーロッパウナギからニホンウナギに切り替わった。

 吉永准教授によると、ウナギは水産資源をどう適正に消費するかを判断する最適の素材だが、限られた資源のウナギを大量消費するのは正しいだろうかと問いかけている。

 乱獲や環境破壊の影響で、漁獲量が減少し、高値が続くウナギ。天然の稚魚を国内で養殖する完全養殖はまだ実現していない。

 JNN(7月5日)の報道によれば、東京大学など9つの国と地域が参加する世界初の研究チームは、産卵場所やエサなど謎に包まれたウナギの生態を科学的に解明しつつ、安定的にウナギを確保するための本格的な調査に乗り出した。

 研究チームは、ウナギの産卵場所とされる南太平洋などの海域で7種類のウナギの稚魚や卵を採取、海水の分析によってウナギの産卵や生育に適した環境を分析する。熱帯の異種ウナギとニホンウナギのハイブリッドを作り、成長率を高めながら、生産効率を上げれば、完全養殖も夢ではない。

 いつでも、安く、美味しいウナギを食べたい。今こそ、有限な水産資源ウナギの食べ方をよく考えるべき時かもしれない。


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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