性同一性障害の受刑者や被告に適切な医療措置を(shutterstock.com)
5月24日付けの日本経済新聞によれば、日本精神神経学会とGID(性同一性障害)学会は、矯正施設(刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所、婦人補導院)に収容されている性同一性障害(Gender Identity Disorder:GID)の受刑者や被告に適切な医療措置の改善を求める要望書を法務省に早急に提出すると発表した。
報道によると、昨年12月の東京地裁の初公判で、殺人罪で起訴された菊池あずは被告(29)は、東京拘置所でホルモン剤を処方されていなかった事実が明らかになった。
菊池被告は男性だったが、GIDと診断され18歳から女性ホルモン投与を受け始めた。20歳の時に性別適合手術を受け、戸籍上も女性になった。だが、東京拘置所に収容された昨年3月以降、女性ホルモン投与を受けていない。
菊池被告の弁護人は投与を強く要請したが、東京拘置所は病気ではないという理由で応じていない。2011年、法務省は「GIDがある収容者のホルモン療法については、特に必要な事情が認められない限り、医療上の措置の範囲外にある。投与するか否かは個別の判断になる」と全国の刑務所や拘置所に通逹している。
岡山大学大学院の中塚幹也教授(GID学会理事長)によれば、性別適合手術後に女性ホルモン投与を受けないと、めまい、不眠症、うつ病、パニック障害、動悸、神経性の胃炎、過敏性腸症候群、過呼吸症候群などの発症リスクが高まると指摘している。
要望書は、治療や支援が遅れれば、自殺や重大な健康被害が生じることもあるため、GIDの受刑者や被告が専門知識を持ったGID学会の認定医による高水準の医療を受けられるように強く求めている。