オゾンガス注射がQOLを改善!?
一方、ブラジルの小規模研究では、膝関節にオゾンガスを注射する治療に有望性が認められた。 変形性膝関節症患者を対象として、63人にオゾンガス、35人に空気を注射して比較した結果、オゾンガス群には疼痛、身体機能、全般的な健康状態、生活の質(QOL)に有意な改善がみられたという。しかし、立ち上がり、歩行し、戻って来て座るまでに要した時間については、2群間に大きな差はみられなかった。
研究を実施したサンパウロ連邦大学のCarlos Cesar Lopes de Jesus氏とVirginia Fernandes Moca Trevisani氏は、オゾン注射により痛みが緩和され、人工関節置換術を先延ばしできる可能性があると述べている。
先の米レノックス・ヒル病院のRoth氏は、この治療法について「概念は興味深い」と述べる一方、今回の研究では疾患の程度を区別していない点を指摘し、オゾン注射による便益を得られるのはどのような患者であるかを明らかにするにはさらに研究を重ねる必要があると述べている。
変形性膝関節症は症状の現れ方や進み方の個人差が大きく、その治療選択は複雑だ。主に薬物療法、日常生活指導、理学療法、手術療法などがあり、薬物療法としてはステロイド、非ステロイドの薬で、炎症や痛みを軽減する。さらには関節を潤滑させることを目的としたヒアルロン酸注射、炎症を抑えるためのステロイド注射などが一般的だ。今回の研究でステロイド注射の安易な使用が疑問視されることになった。
病気そのものの根治が難しいこうした整形疾患では、どの症状の軽減がもっとも必要かを主治医とよく相談した上で治療法を選択したい。
(文=編集部)