注意してもなくならないのが交通事故(shutterstock.com)
注意してもなくならないのが交通事故です。列車や自動車にはさまざまな安全装置が施されていますが、運転する人の技量などに問題があれば、いくら対策を講じても事故は防げません。今回は列車と自動車の安全対策を比較し、事故につながる突発的な健康異変や高齢化などによる要因と対策について考えます。
「道路」と「線路」で違う事故の原因
最近テレビなどで、「ぶつからない車」と称して、壁に向かって走る車が自動的にブレーキをかけて止まる映像を目にすることが増えました。前方の障害物を検知して、自動的にブレーキをかける予防安全システムです。しかし、前方に飛び出してくる歩行者をすべて検知できるわけではありませんし、完全に停止できるとは限りません。ですから「ぶつからない」と過信するのではなく、これまでどおり安全運紜を心掛けなければならないのです。
一方で、私たちが日頃から利用している列車(電車)については、複数の安全対策が施されています。かつて、山陽新幹線の運転士が運転中に睡眠時無呼吸症候群によって意識を失い、運転操作ができなくなるという事態が生じました。列車は自動的に停止したので事故につながりませんでしたが、これが自動車だったら大惨事になっていたでしょう。
列車は軌道上しか走りません。原則として軌道内に人は立ち入ることができないよう、法律で規定されています。したがって、ホームから軌道内への転落や踏切への侵入などがなければ、自転車や歩行者などが列車と衝突することは起こりません。
しかし、自動車は道路やスペースがあるところを自由に走行することができます。さらに道路は、自転車や歩行者なども共有しているスペース。したがって、これら同士の接触事故が起こり得るのは当然のこと。自転車の歩道走行が限定され、原則として車道を走行するように規定され、その結果、「自転車対歩行者」の事故は減少しました。ところが、「自転車対自動車」の事故は増加しています。
道路の信号機は、道路交通法4条1項で設置が規定されています。その目的は、交通の安全と円滑を図ること、交通公害、その他の交通に起因する障害を防止することです。列車の場合も軌道内に複数の編成が走行するので、同様の信号システムがあります。
昭和22年に「上野-鶯谷」駅間で電車の運転士が信号を見落としたことによる事故が発生しました。そこで、停止信号の一定距離手前で警報ベルが鳴り、注意喚起をするシステムが、昭和29年、国鉄に導入されました。