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【DNA鑑定秘話 第14回】

冤罪の可能性が高かった「飯塚事件」死刑執行が急がれたのはなぜか?

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現在、飯塚事件は福岡高裁に即時抗告中(写真は最高裁判所HPより)

 1992年2月20日、福岡県飯塚市で小学校1年生の女児2名が登校途中に失踪した。翌21日、隣接する甘木市(現・朝倉市)の山中で女児2名の遺体を発見。3月20日、福岡県警は、被害者と同じ校区に住む久間三千年(くま・みちとし)元死刑囚(54歳)を参考人として聴取。ポリグラフ検査を実施し、毛髪と指紋を採取。被害者の身体に付着していた犯人の血液型・DNA型が久間元死刑囚のものとほぼ一致したという鑑定結果を認定した。

 2年後の1994年9月23日、福岡県警は、女児の衣服に付着していた繊維片は久間元死刑囚が所有する車のシートの繊維と一致したと認定し、死体遺棄容疑で逮捕。10月14日、福岡地検は死体遺棄で起訴。11月5日、殺人・略取誘拐で追起訴。久間元死刑囚は逮捕以来、一貫して無罪を主張した。

 1999年9月29日、福岡地裁は数少ない状況証拠を根拠に有罪と認定し、死刑を求刑。2001年10月10日、福岡高裁は控訴を棄却。2006年9月8日、最高裁は死刑を求刑。だが、再審請求準備中の2008年10月28日に急遽、死刑が執行された。

問題点が多い鑑定方法

 飯塚事件で用いられたDNA鑑定は、2009年4月にDNA再鑑定によって冤罪が明らかとなった足利事件と同じMCT118鑑定だった。MCT118鑑定は、塩基配列部分を増幅させ、配列の繰り返しパターンを分析して個人を特定する鑑定法だ。両事件は、MCT118鑑定という鑑定法も鑑定時期も鑑定当時者である科学警察研究所(科警研)も共通している。

 特に飯塚事件のMCT118鑑定は、問題点が多い。分析の目盛りとなる123ラダーマーカーに欠陥がある、電気泳動像のバンドの幅が広く型の判定が容易にできない、現場で採取した試料と被告人から採取した試料を同時に電気泳動させていないなど、鑑定精度の信憑性が疑われる。また科警研は、鑑定試料を多量に消費し、再鑑定が不可能と主張したなど不可解な問題点が浮上した。

 さらに、被害者の失踪現場付近での目撃証言も、事件発生から何か月も経過後の証言である、科警研のDNA鑑定が出た後に証言を始めた、証言内容は詳細すぎて不自然かつ合理性を欠くなどの指摘がある。

死刑執行を急いだのはなぜか?

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