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病気で倒れたら会社や国はどこまで面倒をみてくれる? 医療費・生活費・教育費......

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もし働き盛りの父親が病気で倒れたら...shutterstock

 ある40代のサラリーマンが、くも膜下出血で倒れた。一命はとりとめたものの、40日間の入院生活を余儀なくされ、しかも脳疾患特有の運動失調や記憶障害などの後遺症で、現在はリハビリ専門病院に転院して機能回復に励んでいる。病との戦いは長期戦になりそうだ。彼は中学生と高校生の子供を抱え、妻は親の介護も重なり疲れきっている......。

 厚生労働省の調査によると、3大疾病(がん、脳疾患、心臓疾患)で倒れた場合、入院生活が3カ月以上に及ぶと、患者の約半数が休職に追い込まれるという。さらに、うつ病や精神疾患の場合は、1年以上の長中期にわたる休職者も少なくない。

健康保険からの傷病手当は最長18カ月

 一家の大黒柱が病気で倒れた場合、傷病手当は1日標準報酬日額の3分の2に相当する金額が健康保険から支給される。支給期間は、最長で1年半(18カ月)。重度障害者となった場合のみ、障害年金が支給される。

 しかし、介護に終わりはない。家族の介護に忙殺され妻が外に働きに出ることもできず、生活困窮に追い込まれることも少なくない。たとえ妻が働きに出れたとしても、在宅の病人を抱えていればフルタイムで働くのは難しく、ヘルパーを頼めば経費もかさむ。

 もし死亡したらどのような保障があるか。住宅ローンの残額は、ローンを組む段階で団体信用生命保険に加入するので、それで完済になる。また、サラリーマンの場合は、厚生年金から「遺族年金」が支給される。会社からは弔慰金、退職金などが支払われる。だが、残された家族は、それだけで暮らせるわけではない。幼い子どもがいる場合、妻の負担は大きい。

 正社員として健康保険や厚生年金を支払っている人はまだいい。非正規労働者となれば、傷病手当て、遺族年金も期待できない。病気になった時点で貧困がすぐ見える。失業に追い込まれ、生活保護を受ける事態にもなりかねない。

ひと月の上限が決まっている高額療養費制度を利用

 3大疾病を発症した場合、手術や入院費など高額な治療費を支払うことになる。大きな負担となるが、暦月の自己負担が一定額を超えると、国の「高額療養費制度」で超えた部分の支払いが免除されることも知っておきたい。そのためには、加入する医療保険から事前に「所得区分」の認定証をもらっておくことをお忘れなく。

 今年から所得区分によって、ひと月あたりの自己負担限度額が以下のように変わった。

●年収370〜770万円(健保:標報28〜50万円、国保:年間所得210〜600万円)
 =上限8万1000円+(医療費−26万7000円)×1%

●年収370万円以下(健保:標報26万円以下、国保:年間所得210万円以下)
 =5万7600円

●住民税非課税の低所得者
 =3万5400円

 ただし、月をまたぐと、各月にかかった医療費としてなって合計されない。「入院治療のスタート」は、できれば"月初め"にというのが裏技である。

 民間の生命保険の医療特約に加入している人も多いだろうが、がんに関していえば、その多くが過去5年間に遡り罹患していないことが加入条件だ。かつては、60日以上の労働制限や後遺症が残った場合に保険金が支払われる条件だった。最近では、手術した段階で支払われるのが一般的である。

 上手に社会復帰できればよいが、つまずくと退職に追い込まれることにもなりかねない。保険料の未払いや高齢化による医療費の増加で、年々健康保険の保険料が高額になっている。が、病気になってみて初めて健康保険のありがたみが分かる。最低限、公的健康保険の加入は必須だ。医療特約などがついた生命保険、掛け捨ての医療保険などを比較検討して、備えておくと少しは安心だ。
(文=編集部)

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