MENU

がんで死にたくなかったら歯間ブラシを使え!?歯周病とがん死の深い関係

 日本人の成人の約8割が「歯周病(ししゅうびょう)」、つまり、これを読んでいるあなたもほとんどの確率で歯周病であるということを知っているだろうか?

 歯周病は、歯垢(プラーク)に含まれている細菌、「歯周病菌」感染によって、歯茎が腫れたり出血したりして、進行すると歯を支える骨が溶けて、歯が抜けてしまう病気。
 もしかしたら、以前は一般的に言われていた「歯槽膿漏(しそうのうろう)」という言葉のほうが聞き慣れているかもしれない。歯槽膿漏は歯から膿が出る、歯周病の一症状を指す言葉で、歯周病の中でも最も重い症状を指す言葉だ。

 10歳になる前に既に歯周病が始まっている者が3割を超え、10歳代後半からその数は約7割に達し、30代後半には約8割が歯周病。40歳代後半になると、歯が一本もない者が出現、70歳代後半になると、歯がない者は2割超え。

「歯茎が多少腫れたからって死にゃあしない」
そう思っているかもしれない。だが、実は歯周病の有無で、がんの発症リスクは異なる。いまやがんになっても早期発見早期治療で治るケースが増え、がんでは死なない時代になりつつあるが、がんになった場合に歯周病の有無が生死を分けといわれる。

●歯周病だと、各種がん発症リスクが大幅アップ!

「歯周疾患がある場合になんらかの癌を発症するリスクは、ない場合に比べて14%高い」

 2008年にイギリスのImperial College Londonの研究者、Dominique S. Michaud博士らが発表した研究結果は衝撃だった。40歳から75歳の男性約5万人を17年以上にわたって追跡調査し、がんの発症と歯周疾患に関連があるかを調べた研究の結果である。

「歯周病によってリスクが上がるがんは口腔がんや喉頭がんなど口に関係する部位のがんだろう」と思うかもしれない。だが、そうではない。この研究によれば、特に発症リスクが高かったのは54%増の膵がん、49%増の腎がん、36%増の肺がん、30%増の血液がん。

「たかが歯茎の腫れ」が、あなたをがんにする。

●歯周病のせいでがん治療が行えない悲劇!

 がんは治せる時代になったとはいえ、その治療は決して楽ではない。放射線治療や、化学療法と呼ばれる抗がん剤を用いた治療には多くの副作用がある。疲れやすさや下痢など体力が落ちるので、食事で栄養を取るのが大事なのに、吐き気やおう吐、食欲不振で、食べ物がのどを通りにくくなる。治療のつらさで、人格が変わったようになることも少なくない。また、がん治療によって、感染症にかかりやすくなる。

 特に口が渇くため、口の感染症が増え、口内炎ができたり、歯周病が悪化したりする。一般的な抗がん剤治療を受ける患者の約4割、造血幹細胞移植治療のような強い抗がん剤治療を受ける患者の約8割に、口に関係する何らかの副作用が現れると報告されている。

 そのため、医師はがん治療を開始する前に、歯科で虫歯や歯周病の治療をしておくようにと言う。がん治療のガイドラインなどにもこのことは記載されており、がん治療開始前の歯科治療は現在のがん治療の常識だ。

 重症の歯周病があり、治療に時間がかかるようであれば、がんの治療開始が遅れる場合もある。さらには、がん治療を始めたものの、歯周病の悪化など、口内の問題により、治療を中止せざるを得なくなることも多い。

「がんになっても死にたくない」「治療を受けてまた元気になりたい」と思うなら、口の中を健康な状態にしておくことが欠かせない。

関連記事
アクセスランキング
専門家一覧
Doctors marche