【病気の知識】
子どもが本来食べたり飲んだりしてはいけないあらゆるものを口にしてしまうこと誤飲といいます。しかも、それが健康に被害を与える可能性があるものが治療の対象となります。
誤飲の頻度の高いものとして、たばこ、薬品、化粧品、殺虫剤、洗剤などがあげられます。誤飲した後に幸いにしてなんの症状も出ないことも少なくありませんが、意識障害に陥ったり死に至る場合もあり、十分な注意が必要です。
とくにたばこ吸い殻の入った灰皿に水を入れておいた場合など、ニコチンが大量に溶け出しており、それを誤飲すると極めて重い中毒を起こすことがあるので十分に気をつけなければいけません。
ここでは代表的な誤飲対象であるたばこを例に説明します。軽いタバコも多いですが、たばこ一本あたりのニコチン含有量は10~20ミリグラムとして、成人のニコチン中毒による致死量は40~60ミリグラムですから、乳児ではたばこ一本でも中毒を引き起こすばかりでなく、十分な致死量であることが分かります。
最初の症状は、誤飲してから約30分ほどで現れます。吐き気、唾液分泌の増加、顔面蒼白、四肢の冷感、頻脈、発汗、腹痛、下痢などが主要な症状です。大量に誤飲した場合は、血圧の低下、徐脈、不整脈などが出現し、1時間以内に死亡することもあります。軽症例では、ニコチンが体から排泄されるにつれ次第に症状は改善してきます。早い場合は1から2時間で回復してきますが、重い場合では約1日かかります。
現場の状況で判断することが一般的ですが、どうしても分からなくて事実を把握する必要がある場合や現在の状態を詳しく知る必要がある場合には、腹部レントゲンや腹部エコー、口または鼻から胃に管を入れて内容物を確認することもあります。
まず、治療をすべきか経過を観察すべきかを判断する必要があります。
たばこの場合少々かじったぐらいではニコチンの摂取量は限られており慌てることはありません。しかし半分ちかくを誤飲してしまった場合は注意が必要です。最も安全な方法は医療機関に受診し、診察を受け必要な処置を受けることです。しかし、受診が困難な場合の応急処置としては、少量の水を飲ませ吐かせると良いでしょう。多量の水分をとらせることは、胃の中でニコチンが溶け出しやすくなり、かつ胃の中にあったものが腸に進んでしまい、中毒を悪化させる恐れがあるので避けなければいけません。
誤飲後2時間ぐらい様子を見て、ほとんど症状が出ないようならまず心配ありませんが十分な観察は行いましょう。4時間が経過すればその後の心配はいりません。
ただし、中毒以外でも気をつけるべきことはあります。例えば磁石の誤飲など、腸壁を挟んで複数の磁石が結合し、腸の壊死を起こした例などもあり、便に排泄されるまで注意が必要なものもあります。
誤飲の予防は、日ごろの環境整備と危険物の管理が大切なことは言うまでもありません。多くの場合、親のわずかな油断が事故に結びついています。たばこを始め、薬や化粧品も必ずフタをしっかり閉め、子供の手の届かないところではなく、目の届かないところに保管することが大切です。
タンスの上や食器棚の中など見えるところに置いておくと、取ろうとして怪我をすることも多いので気をつけましょう。
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