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二次性水頭症・正常圧水頭症

【病気の知識】

監修:高橋伸明/福岡記念クリニック院長・脳神経外科医

どんな病気

 脳は脳脊髄液(髄液)の中に浮いていて、脳内には脳室という髄液がたまっている部分があります。髄液は脳室で作られ、脳の周りを循環し、静脈へ吸収されます。

 一般的に水頭症とは、髄液の流れが悪くなるために脳室が拡大したものを言います(髄液循環障害)。他の原因として、髄液産生過多や髄液吸収傷害が挙げられます。広い意味での水頭症は、脳室の拡大だけではなく、頭蓋内の髄液腔の拡大という意味ですが、この項では脳室の拡大という意味で水頭症という言葉を使います。

■二次性水頭症

 水頭症は先天的なものばかりではありません。髄膜炎・外傷・脳出血・脳腫瘍などの病気で髄液の通り道が塞がると水頭症が起こります。これを二次性水頭症といいます。この場合髄液の逃げ場が亡くなるので脳圧が高くなり、激しい頭痛・嘔吐・意識障害が起こり生命に関わることがあります。

どんな症状

 脳腫瘍の場合、水頭症が比較的ゆっくり進行します。視力が悪くなって初めて気がつく場合がありますが、だんだんとひどくなる頭痛・嘔吐が特徴的です。脳出血や外傷は急激に発症し、意識障害が起こった場合は数時間で生命に関わりますから早急な処置が必要です。髄膜炎でも水頭症が起こりますが、小児例で重症の場合治療がなかなか困難です。

どんな検査

 脳出血の場合、頭部CTが最も有用です。脳腫瘍の場合はMRIが必要な場合が多いですが、水頭症が発見された場合、緊急の応急処置で脳室穿刺を行い髄液をとりあえず外に出して(脳室ドレナージ術)、その後にゆっくり診断と治療を行うこともよくあります。慢性期になっても水頭症が持続する場合はシャント手術を行います。

■正常圧水頭症

 水頭症の特殊な状態で、正常圧水頭症という病態があります。通常の水頭症で見られる頭痛・嘔吐で発症することはなく、歩行障害・尿失禁・認知症が特徴的な症状です。シャント手術を行うと症状は改善します。正常圧水頭症の状態は髄膜炎・頭部外傷・脳出血の慢性期に起こります。

 原因が特定できない正常圧水頭症を特発性正常圧水頭症といい、成人に発症します。認知症の5%が特発性正常圧水頭症で、シャント手術(脳室・腹腔短絡術)をすると認知症も改善することが多く、治療可能な認知症として注目されています。
 

どんな症状

 歩行障害・尿失禁・認知症が3大症状です。最も早期に出現し、頻度が高いものが歩行障害です。両足を開いたようになり、歩幅が狭く広く歩くのが遅くなります。尿失禁は最も頻度が少なく遅く出現します。認知症は無欲状・無関心などが目立ち、攻撃的なアルツハイマーのような認知症とは少し違っています。ただ、このような症状は他の認知症やパーキンソン病でも見られ、重傷の頭部外傷や脳血管障害の場合も必発な症状なので、この症状だけで診断はできません。

どんな検査・治療

 頭部CTやMRIで脳室の拡大があることと、3症状があることが条件ですが、高齢者では脳萎縮が強い例があり、脳萎縮と脳室拡大の判別が困難な場合があります。また、症状も本疾患に特異的なものではありません。正常圧水頭症の定義は「シャント手術をすると症状が改善する」というものですから、シャント効果があるかどうかをあらかじめ判定しなければいけません。手術効果の判定には、髄液排除試験が有効と考えられます。腰椎穿刺をして髄液を30ml以上抜いて、その後の症状が排除試験の前よりも改善があれば、シャント効果が期待できる。特に歩行の速度や歩幅を試験前後で比較すると、改善したかどうかを数値で判断することができます。

 他にもいろいろな検査がありますが、確実に診断することは難しく、可能性が高いからシャント手術を行ってみて、症状が改善するのを期待しましょう、という程度のものです。しかし、シャント効果のある場合は、見違えるほど回復する場合がある。には脳室・腹腔短絡術、脳室・心房短絡術、腰髄くも膜下腔・腹腔短絡術がありますが、一般的には脳室・腹腔短絡術を行います。体外から圧の調節が行える圧化変式シャントシステムを用いるのが一般的です。

どんな予防法

 頭部外傷や脳血管障害になった後に寝たきりになった場合や、認知症になった場合は、正常圧水頭症かどうかをきちんと調べてもらいましょう。正常圧水頭症の場合、シャント手術を行うことで劇的に改善し、寝たきりだった患者さんがリハビリで歩けるようになる場合もあります。

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