「野菜果汁ジュース」は「野菜」ではない!?
さて、野菜果汁100%ジュースはどうか? 太るのか? 果物や野菜なら痩せるのか? 野菜の1日あたりの摂取量の目安は350gとされる(厚労省「健康日本21」)。野菜果汁100%ジュースのメリットとデメリットを整理しよう。
まずは野菜果汁ジュースのメリットから――。
ワンパケージの缶入りや紙パックの商品をいつでも買えるので、ジューサーなどで絞る手間や時間が一切かからない。低価格のため、飲み続けられる。果汁入りなので甘く、野菜嫌いの人でも飲みやすい。しかも、飲みたくなれば、外出先のコンビニやスーパーなどで、さっと手軽に買える。開封しなければ、保存がきくので年中飲める。
つまりは、忙しい現代人のコンビニエントなライフスタイルのニーズにピタッと合っている。それが野菜果汁ジュースの何よりのアドバンテージ(強み)だ。
かたや、デメリットはどうだろう?
保存や運搬の利便性のため、濃縮還元し、加熱殺菌しているので、含有する有機酸、ビタミン、消化酵素などが破壊されるため、野菜に含まれる栄養素を過不足なく摂取しにくい。
濃縮還元とは、煮沸、真空、凍結などで水分を絞った後、水分、糖質、香料、調味料を加えて元の濃度のジュースに加工した状態だ。特に高温で熱すると、熱に弱い水溶性のビタミンCは失われやすい。ただ、熱に強いビタミンA・βカロチン、脂溶性のビタミンE、葉酸、カリウム、鉄分などは熱処理で失われにくい。
また、水に溶けない「不溶性食物繊維」は、製造過程で搾りカスとして取り除かれるので、ほとんど含まれない(約1g程度は含まれる場合がある)。整腸作用や老廃物の代謝作用があり、本来摂れるはずの「不溶性食物繊維」が失われているため、野菜、果物、海藻などで摂取しなければならない。
さらに、たとえば「野菜汁60%、果汁40%」の成分表示にあるように、糖質を制限したくても余分な果汁を摂らなければならない。糖質が多く、カロリー過剰につながりやすいので、ダイエットに適しているとは言えない。
また、原材料がトマトやニンジンなどに偏りがちなので、栄養素バランスが偏り、たくさん飲んでも摂れる種類が限られる場合が少なくない(バランスを配慮した商品もある)。
さらに大きなデメリットがある。噛んで消化する咀嚼力が弱まる点だ。つまり、野菜果汁ジュースは、噛まないので、満腹中枢刺激による食べ過ぎを抑える効果が衰えやすい。したがって、消化酵素の分泌が促進しないため、消化吸収が弱まる。脳の活動機能が低下する。肥満になる。唾液分泌による虫歯の予防が進まない。顎関節の働きが強まらない。顔の筋肉が引き締まらなので、小顔効果が期待できないなどのリスク(弱み)が生じる。
つまるところ、野菜は食物だが、野菜果汁ジュースは飲み物にすぎない。野菜と同じ効果やバランスが望めないのは当然至極なのだ。
野菜ジュース=健康、という方程式は磐石ではない。
(文=編集部)