足の動脈の病気で最も多いのが「閉塞性動脈硬化症」
今回の「血流」と「足の悩みあるある」の調査結果を見れば、足の血管(動脈と静脈)をしなやかに保つ大切さに気づかされる。
足の動脈は、足の指先に向かって血液を送り、酸素と栄養を供給している。足の動脈の病気で最も多いのが、動脈が途中で詰まる動脈硬化によって、酸素不足や栄養不足を起こす「閉塞性動脈硬化症」だ。
代表的な症状は、片足を引きずる「間欠性跛行」。坂道を歩くと、ふくらはぎに凝りや痛みを感じ、休むと痛みが改善して再び歩けるようになる。だが、病気が進行すれば、足が冷たく痛む、皮膚の紫色になる、傷が治りにくい、足の指やかかとに潰瘍ができるなどの症状を伴う。
「閉塞性動脈硬化症」の最も簡単かつ確実な検査法は、足の動脈の拍動に触れるか、手の指を当てて脈拍を確かめることだ。拍動を感じなければ、動脈が詰まって血液が流れていない。触れる場所は、足のつけね(大腿動脈)、ひざの裏(膝窩動脈)、くるぶしの後ろ側(内顆動脈)、足の甲(足背動脈)などだ。
病院で行う検査法には、ふくらはぎに血圧計のマンシェットを巻いて足の血圧を測る検査、
足の動脈の詰まっている場所を探し血流をチェックする血管エコー(超音波)検査、CT検査やMR検査がある。
「閉塞性動脈硬化症」の予防・治療の基本は、禁煙、糖尿病のコントロール、毎日よく歩くなどの生活習慣を改善することに尽きる。
特に重要な予防法を整理しよう。
①足に合った適切な靴を選ぶ
②毎日、足を洗って清潔を保つ
③深爪をせず、巻き爪があれば、形成外科で治療してもらう
④水虫(白癬菌)があれば、皮膚科で治療する
⑤カイロなどの低温やけどに注意する
肺動脈に血栓が詰まる「肺血栓塞栓症」
次に、静脈の代表的な病気には、左心房の中に血栓(血の塊)が下肢深部静脈に詰まる「深部静脈血栓症」がある。
静脈は、足先から心臓・肺に向かって血液が流れるため、下肢深部静脈に血栓が詰まると、足からの血液の流れが滞るので、足にむくみが現れる。また、静脈は圧が低く、重力の影響を強く受けて血液量が変化するため、足のむくみは寝ている時に軽減し、立っている時やいすに座っている時に悪化しやすい。
そして、血栓が足の静脈から心臓・肺に流れていくと、肺動脈に血栓が詰まる「肺血栓塞栓症」を起こすため、呼吸困難が生じ、重症ならショック状態になる。
飛行機で長時間旅行した後、突然、呼吸困難やショックを起こす「エコノミークラス症候群」は、「深部静脈血栓症」と「肺血栓塞栓症」が原因だ――。飛行機で長時間座った姿勢でいると、深部静脈の血液の流れが滞り、血栓ができ、「深部静脈血栓症」を発症する。さらに飛行機の到着後、空港で歩き始めると、下肢筋肉が収縮し、深部静脈の血流が増加し、血栓が肺に詰まるため、「肺血栓塞栓症」を引き起こす。
「深部静脈血栓症」の診断は、超音波検査、血栓の存在を測定する血液検査、併せて「肺血栓塞栓症」も診断できる造影CT検査やラジオ・アイソト-プ検査がある。「深部静脈血栓症」の治療は、血液の凝固がを抑制するヘパリンの点滴やワーファリンの内服を行う。
このように深部静脈は、血栓ができやすいので、弾性ストッキングを着用し、足の静脈を圧迫し、静脈の拡張を防ぐことが大切だ。長時間の飛行機旅行などでは、定期的に足の運動を行い、足の静脈の流れを良くしなければならない。
その他、下肢の表在静脈の逆流が生じて、表在静脈が拡張し、こぶのように膨れ上がり、腫瘍が悪化する「下肢静脈瘤」もあるので、気をつけよう。
とりわけ酷寒の冬は、足の健康に無頓着になりがちだ。適度な運動や散歩を欠かさず、血管をしなやかに保ち、動脈硬化を起こさないことが何よりも肝要だ。
(文=編集部)
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