侮れない「空気」の影響力
さらに研究陣の見解は、くしゃみが数回くり返された場合も呼気サンプル中のウイルス量は変化していないことから「くしゃみによる影響(感染力)」も従来考えられてきたほど大きいものではない点を示唆。むしろ問題は、空気感染そのものというわけだろう。
主導者のMilton教授は、今回の研究に関するメリーランド大学のプレス資料でこう述べている。
「感染者が咳やくしゃみをしなくても、インフルエンザ患者が呼吸をするだけでも、周囲の空気にウイルスが放出されるという現象が判明した。であるならば、感染者が職場や学校に出てくる例に関してはこれまで以上の注意が必要だろう」
そして以下のように注意喚起を促す。
「(本人の意向に左右されず)周囲への感染を防ぐという優先度からも、職場や学校には留まらせず、即座に帰宅してもらうべきだろう」
「われわれがさらに強調したいのは、今回の研究成果をぜひ企業や教育関係施設、あるいは通勤・通学車内の喚起システム改善などを通じたインフルエンザ予防策として、その向上に活かしてほしいという点である」
インフルエンザ発生は1999年以来「最多」「最悪」
空気感染、恐るべし。1月26日に公表された厚生労働省の定点当たり報告数(1月第3週)も、インフルエンザの発生状況は前週比で約2倍近くに増加。増加傾向は全47都道府県で観られ、その値は統計開始の1999年以来「最多」「最悪」を記録した。
今回の研究には直截関与はしていないものの、専門家の立場からSherly Ehrman氏(米サンノゼ州立大学)は、次のような危機感と警鐘を述べている。
「部屋を隅々まで清潔にし、人一倍頻繁に手洗いをして、咳をしている人には近づかないという慎重さで予防対策をとる。それらは確かにインフルエンザの感染リスクを低下させる上で、一定の効果があることは確かだろう」
そして以下のように続ける。
「しないよりはしたほうが良いに決まっている。ただ、それは大前提としても……患者が呼吸するだけでもインフルエンザウイルスが飛散してしまうのであれば、こうした対策だけでは完全に自分の身を守ることはできないのも確かである」
2月を迎え、インフルエンザ猛威のピークはまだまだ当分は続く。備えあればの予防対策に「大袈裟過ぎる」という形容は該当しないようだ。
(文=編集部)