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【シリーズ「AIと医療イノベーション」第13回】

3年後にAI(人工知能)新薬が販売される?実現すれば新薬開発の時間を短縮し薬価も大幅にダウン

新薬候補探しの時間を短縮、開発リスクも薬価も大幅にダウン

 まず、病気の発症に関係するタンパク質などに働きかける新薬候補を発見する→動物実験や臨床検査で有効性や安全性を検証する→参加する企業と研究機関は100人規模の研究開発専任チームを結成する。

 続いて、狙った新薬に関係する学術論文、理研や京大病院が持つ臨床データ、スパコン「京」が解析した新薬候補データをAIに入力する→AIは蓄積されたビッグデータを学習して最善最適な新薬候補を探索しながら、有効性や・安全性・経済性を高精度に解析する→製薬各社は新薬候補を絞り込み、検証を重ね、新薬候補を決定する→製造販売の承認申請→審査・承認→販売、という流れになる。

 2~3年以上かかる新薬候補探しを大幅に短縮できる。副作用の恐れがある新薬候補をAIが除くので、成功率が高まり、開発リスクが下がる。高額な薬剤と有効性が同じ安価な薬剤を開発できるため、薬価の大幅なダウンにつながるなど、AI創薬のメリットは絶大だ。

 このAI創薬プロジェクトだけでなく、国立研究開発法人の医薬基盤・健康・栄養研究所もAIによる新薬候補探しを2017来年度中にスタートする。そのほかにも、複数のAI創薬プロジェクトの市場参入の動きがある。

 製薬最大手の武田薬品は、世界の製薬業界ランキング17位。日本の製薬大手は、経営規模も実績も開発費もリソースも、米国のファイザーやスイスのノバルティスなどのビッグファーマに水を大きく空けられている。

 武田信玄の風林火山ではないが、迅(はや)きを旨にしなければ、創薬戦争に勝ち残ることはできない。AI創薬プロジェクトが打ち上げ花火や徒花(あだばな)に終わらないように動向を見守りたい。
(文=佐藤博)


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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