抗がん剤治療で「ケモブレイン」に!?(shutterstock.com)
がんの化学療法の影響として、記憶力、思考力、集中力が低下する「ケモブレイン(chemo brain)」という症状が現れることが近年明らかになり、研究が進められてきた。
このほど、乳がんサバイバーを対象とした解析で、投与される薬剤の種類によって認知機能への影響が異なること、特にアンスラサイクリン系薬剤は、その他の化学療法や非化学療法と比べ、認知機能に悪影響を及ぼしていることが示唆された(JAMA Oncol 2015年12月3日オンライン版に掲載)。
薬剤によって、認知機能に対する影響が異なる
米テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターのShelli R. Kesler氏らは、2008~2014年にスタンフォード大学で診療を受け、治療終了から2年以上経過した初発乳がんのサバイバー62例について、認知機能検査と安静時機能的MRIによる頭部画像を評価し、アンスラサイクリン系薬剤を投与されていた群(20例)、非アンスラサイクリン系薬剤による化学療法を受けた群(19例)ならびに非化学療法群(23例)の3群を比較した。
その結果、アンスラサイクリン群では他の2群に比べ、認知機能検査において即時再生や遅延再生の機能低下が認められ、安静時機能的MRIによる診断では、左大脳半球の楔前部(記憶、空間視覚処理、意識等に関連するとされる部分で、アルツハイマー病患者の一部に、この部分の血流の減少が認められている)の機能的結合性が低下していた。
また、患者の自己報告に基づく評価では、アンスラサイクリン群と非アンスラサイクリン群では非化学療法群に比べ、認知機能の低下や精神心理的ストレスの悪化が認められた。同報告では、アンスラサイクリン群と非アンスラサイクリン群で、悪化の程度に差はなかった。
米インディアナ大学メディカルセンターのKelly NH. Nudelman氏らは付随論評(JAMA Oncol 2015年12月3日オンライン版)のなかで、「今回の研究は、ほかにもさまざまな化学療法が認知機能に影響を与えることを示唆するものである。今後さらに研究を行い、個別化治療につなげることが期待される」と評価している。