最高血圧120mmHg台でも高血圧に?(shutterstock.com)
中高年にさしかかり、体型もメタボになってくると、「健康診断のたびに気がかりなのが血圧測定」という人も多いだろう。ご存じの通り高血圧は、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞などの重篤な病気の引き金となるもの。こうした病気になるリスクを減らすためにも、血圧を正常値に保つことはとても重要だ。
現在、日本や世界の多くの国のガイドラインでは、最高血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、または最低血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上を「高血圧」としている。しかし、今年9月にアメリカの国立心肺血液研究所が発表した研究結果が波紋を広げている。さらに厳しく「最高血圧は120mmHg未満に抑えるべきだ」というのだ。
血圧を120mmHgにすると死亡リスクが25%下がる
「血圧目標を低くすることで、高齢者における循環器系の合併症や死亡のリスクが劇的に下がる」
こんな見出しが付けられたプレスリリースが、米・国立心肺血液研究所から発表された。今回の研究は、50歳以上で心臓病や腎臓病などを発症する恐れのある高血圧患者約9400人を対象とし、2010〜2013年まで実施されたもの。
被験者を2つのグループに分け、降圧剤などを利用して、片方のグループは最高血圧を1200mmHg未満に、もう片方は1400mmHg未満に抑えて、3年3カ月に渡ってそれぞれの経過を見た。その結果、前者は後者より心臓発作や脳卒中の発生率が3分の1減り、さらいに死亡リスクが約4分の1下がったというのだ。
これまで最高血圧が120〜140mmHgの間の健康リスクに関しては、実証的なデータが存在しなかったが、今回初めて示された。研究は当初2018年まで行われる計画だったが、科学的な検証が進み、一般の人の健康を維持する上で「重大な結論」として、前倒しで発表することを決めた。
研究グループは「高齢者や発症リスクが高い人では、血圧をより低い目標に設定するべきだ」と見ている。腎臓病、認知機能、認知症への影響については現在も解析中で、今後公表予定という。
最高血圧が10mmHg高いと病気の発症率も10%以上高まるといい、米国立心肺血液研が示した基準に従うと、かなり大きな差が出る。今まで「140mmHg未満」を目安に生活していた患者や、患者予備軍の人たちにとっては、ちょっとした衝撃だ。今後、各国の高血圧の診断に影響を与える可能性もある。