【病気の知識】
感染初期は急性肝炎を発症すれば全身倦怠感、嘔吐、嘔気、食欲不振などの症状を呈しますが、黄疸を来すことは比較的まれ。多くの慢性化例では発症は徐々であり症状は軽い場合が多く、無症状の場合もあります。この肝炎は20〜30年の経過で病像が完成し、そのときになってはじめて肝硬変症などの症状を来すこともまれではありません。
1989年、C型肝炎ウイルス(HCV)が米国のChiron社によって発見され、輸血でうつる非A非B型肝炎と呼ばれていた肝炎のほとんどがC型肝炎であることが判明しました。献血時の血液から、日本人の1〜2%の人がこのウイルスの保有者であることがわかりました。C型肝炎はB型肝炎とは異なり、大人が感染した場合でも、その70~80%が慢性化すること、そして慢性肝炎になったのち、その一部は肝硬変、肝癌に進展する場合もあることが明確となりました。
C型肝炎の感染経路は最もはっきりしているのは輸血ですが、その他に注射器をディスポ化する以前の医療行為、覚醒剤の回しうち、鍼治療など血液を介した感染が考えられています。また、B型肝炎と異なり夫婦間感染や母児間感染は極めて低率です。近年、日本のC型肝炎が原因の肝癌の死亡者が増加しています。現在はHCV抗体のチェックより輸血後肝炎の危険性はほとんどなくなりました。一般に、輸血でC型肝炎ウイルスに感染し、その後慢性肝炎が進行した場合には、平均およそ35年で肝がんにまで進展すると言われており、昭和30年代の売血の増加が30〜40年を経て現在の肝臓がんの増加につながっていると思われます。但し、C型慢性肝炎となっても、その進行がないか緩徐であれば、多くの患者さんは肝がんに進展する可能性は低いこともわかっています。
感染初期は急性肝炎を発症すれば全身倦怠感、嘔吐、嘔気、食欲不振などの症状を呈しますが、黄疸を来すことは比較的まれです。多くの慢性化例では発症は徐々であり症状は軽い場合が多く、無症状で経過することもめずらしくありません。この肝炎は20〜30年の経過で病像が完成し、そのときになってはじめて肝硬変症などの症状を来すこともまれではありません。
C型肝炎の診断は、HCV抗体を測定することにより行います。HCV抗体が陽性の場合は、C型肝炎ウイルスに感染し現在もウイルスが存在する場合と、過去に感染し治癒したため現在ウイルスは存在しない場合のいずれかが考えられます。その鑑別は血液中でウイルスの遺伝子である HCV-RNAの有無を調べることにより行うことができます(アンプリコア定性法)。肝炎の進行度は一般肝機能検査や肝画像診断で行います。
●インターフェロン療法
IFN(インターフェロン)は生体がウイルスに感染した時にウイルスの増えるのを阻止する作用をもち、主な種類は3つで、α型は白血球、β型は線維芽細胞、そしてγ型はリンパ球が作ります。ウイルスの増殖阻止以外に、免疫の力を強めたり調節したりする作用があります。この3つのうち肝炎ウイルスに効くのはαとβ型で、治療効果はだいたい同等です。その使い方はα型の場合は2週間連日に続いて約半年間週3回筋肉注射をします。β型は連日投与で6〜8週間静脈内に注射します。
●インターフェロン療法の効果予測
1990年より保険診療としてこのIFN療法がC型肝炎に対して認可され、およそ3人に1人において、ウイルスが血液中から消えて病気の進行はストップし、肝臓は肝炎から回復しました。しかし残りの方はウイルスは消えませんでした。事前にその効果を予測する因子がいくつか判明しました。
●ウイルスの遺伝子の型≫
日本において、C型肝炎ウイルスの遺伝子の型は主に1B(以前は2型)、2A(3型)、2B(4型)の3種があり、型別にIFNの効き目を確認をしたところ、1Bは約10%、2Aは約70%、2Bは2Aよりややおとるものの1Bよりは格段によいということが判明しました。さらに最近では、簡便な血液検査で、インターフェロン治療効果を予測することができるようになりました。その検査はIL28B遺伝子多型といいます。インターフェロン治療によって根治が見込める患者さんを高い確率(80〜90パーセント)で選別することができ、インターフェロン治療が効きにくいと判断されれば、同治療の副作用である肉体的な苦痛や経済的な問題を回避することができます。
●インターフェロン副作用
これまで報告されている副作用の多くは感冒様症状など一過性であり、薬の使用を中止することにより改善します。まれに治療中止を余儀なされることもあります。その中でも、うつ状態による自殺企図や、間質性肺炎などは、生命に影響をおよぼすため十分な観察が必要です。いずれもその頻度は低いと言われています。
●C型肝炎に対する瀉血療法
身体の中で金属は大切な働きをしています。中でも鉄は赤血球に多く含まれており、欠乏すれば貧血になりますが、この鉄が"炎症"の場においてはかえって悪さをするのです。IFNの効きにくい患者さんに瀉血療法(血をぬくこと)をおこなってGOT、GPTが改善したと報告があります。ウイルスが存在する限り、抜本的治療にはなりませんが、現在一つの治療法として確立しています。
●インターフェロンと発がんの抑制
IFN治療と肝臓がん発症のデータによれば、IFNが著効して、ウイルスが消失した例では、ほとんど肝がんの発生を認めず、無治療群より明らかに良い成績です。治療後の期間が短いものも多く、今後さらに長期にわたる経過観察が必要と思われます。IFNでウイルスが消えなかったグループでもがんの発生が減っているというデータも報告されていますが、今後さらに検討が必要です。
現在輸血による感染は抗体検査によりほとんどなくなりました。母児感染や夫婦間感染の率もきわめて低く、通常の生活では感染することはなく、今後新たな感染はほとんどなくなると考えられます。日常生活の注意はひげそりや歯ブラシの共有はさけることが大切です。今後はむしろ、現在感染している人をいかにみつけるか、そして現在肝炎になっている人たちをいかに治療していくかが重要です。
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