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食道がん

【病気の知識】

どんな病気

 50歳以上に多く発症し、特に高齢者に多く見られる。罹患頻度は人口10万人あたり約5人、胃がんの9分の1から10分の1に相当する。食道は細長い管のような臓器で、その管を輪切り状態にしてみると内側から粘膜上皮・粘膜固有層・粘膜筋板・粘膜下層・固有筋層・外膜という構造になっている。がんは粘膜上皮から発生し、徐々に外側へ発育。発育が粘膜下層までにとどまっているものを表在がんといい、転移のないものを早期がんという。しかし、食道がんは比較的早い時期から転移を起こす。がんが固有筋層まで浸潤したものを進行がんという。

どんな症状

 食道がんの症状の中でいちばん多いのは進行性の嚥下障害(飲み込み障害)だ。最初は固形物が飲み込みにくくなり、そのうち流動食も入らなくなる。また、物を飲み込む時に、痛みやつかえ感、異物感などを訴える人もいるが、いずれにしても、これらの症状がある場合は、ほとんどが進行がんだ。表在がんでは、物を飲み込む時に食道がしみる感じ、胸骨後部の痛みなどを訴える人もいるが、早期には症状のないことが多く、定期検診などで発見されることも少なくない。

どんな診断・検査

 食道がんの診断・検査には、以下のようなものが挙げられる。

○X線検査
 バリウムを飲み、食道を造影する検査。嚥下障害をきたすような進行がんを見逃すことはほとんどないが、早期の食道がんを診断することは、この検査では非常に困難だ。

○内視鏡検査
 内視鏡で食道の粘膜を直接観察する検査。前述したように、食道がんは非常に早い時期から転移を起こしてくるので、早期の食道がんを発見するためには不可欠の検査である。
 早期の食道がんの症状は、ごくわずかな隆起や陥凹、あるいは発赤や退色といった色調の変化が見られるくらいなので、非常に発見が難しい。内視鏡でこのような状態を見つけた時には、「ルゴール」というヨードを含む液体を散布。食道の粘膜上皮にはグリコーゲンという物質は、ルゴールを散布するとがヨードに反応して暗褐色に染色される。しかし、がんがある場合は、グリコーゲンが減少していたり、欠如していたりするので、暗褐色にはならない。染色されない部分があれば、そこを生検(小さな組織を採取すること)して診断をつける。ただし、狭窄の進んだ進行がんは内視鏡を深部へ挿入することができないため、全体像の把握はX線などの他の検査にゆだねられる。

○内視鏡的超音波診断法
 内視鏡的超音波検査は、がんがどの層まで浸潤しているのか調べるためのも。超音波を内視鏡の先端につけて行われる。

 このほか、がんが浸潤している範囲、ほかの臓器やリンパ節への転移の有無を調べるためにCTスキャン(コンピュータ診断撮影)、MRI(磁気共鳴画像診断)、血管造影などの検査方法がある。

どんな治療法

 食道がんの治療は、外科的な手術が第一。がんのある部分とリンパ節を取り除き、残った食道をひっぱってつないだり、胃とつないだりする。しかし、発見が遅れることも多く、手術の適応になるのは全体の60%くらいにとどまっている。手術でがんが取りきれない場合は、放射線療法、抗がん剤を使った化学療法などを組み合わせた治療が行われる。
 最近では、内視鏡の進歩・普及により早期の食道がんが見つかる場合が増えている。このような転移のない早期の食道がんに対しては、内視鏡的粘膜切除術という方法で粘膜のがんだけを取り除く治療も行われている。
 なお、食道がんの5年生存率の平均は、進行がんで約30%、早期がんで約60%である。

●どんな予防法

 食道がんの発生には、喫煙、高濃度のアルコール摂取が関連しているといわれている。また、奈良、和歌山での発生頻度が高く、この地域の人たちが好んで食べる熱い茶粥が食道がんの発生に関わっているのではないかと指摘されたり、中国多発地域ではニトロソアミンという発がん物質が検出され、これも食道がんを引き起こす一因ではないかといわれている。

 いずれにせよがんの予防には、その原因と思われる飲食物、たばこを避けることがいちばんだと考えられている。食道がんの場合には、たばこ、高濃度のアルコール、熱い食べ物などは避けたほうがいい。また、バランスのよい食事を摂ることも大切だ。なかでもビタミンは、体内での発がん物質の発生を防ぐといわれているため、この物質を多く含む野菜や果物は積極的に摂取したいものだ。

 一方、人間ドックなどの定期検診を受けることも大事。しかし、集団検診では発見できないことも多いので、少しでも異常な症状があれば内視鏡検査を受けることが早期発見につながる。

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