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乳腺炎

【病気の知識】

どんな病気

 乳腺組織に炎症を起こしたもので、原因としては細菌感染があります。授乳を始めて2〜3週間後に発生する急性乳腺炎と、慢性化しやすい乳輪下膿瘍が代表的です。細菌感染ではないものはうっ帯性乳腺症といい乳汁が滞留して乳管を閉塞し炎症を起こすものです。

◯原因から分類
①授乳期に起こるもの(大部分)
②授乳期以外に起こるもの→こっちは稀で原因もはっきりしていません

◯時期による分類
①急性乳腺炎=乳汁うっ滞性乳腺炎+ 化膿性乳腺炎
②慢性乳腺炎=急性乳腺炎が慢性化したもの(乳管拡張症、乳輪下膿瘍、肉芽腫性乳腺炎、結核性乳腺炎などの総称)

 授乳期に起こる乳腺炎は、「乳管閉塞(乳汁うっ滞)→非感染性乳腺炎(乳汁うっ滞性乳腺炎)→感染性乳腺炎(化膿性乳腺炎)→膿瘍」と段階的に進行します。症状・治療も段階ごとに違います。ちなみに、化膿性乳腺炎の一部は、授乳とは無関係の乳頭部の傷からの逆行性感染です。

■急性乳腺炎
 授乳中であればいつでも起こります。乳房で母乳を作っても、赤ちゃんがいっぱい吸ってくれないと、母乳の流れが悪くなり、母乳が停滞して、そこに乳頭や乳頭周囲の皮膚が授乳に伴って傷ついて、その傷から細菌が感染して乳腺の炎症をきたしたものです。乳管内に古いお乳がたまり感染して膿瘍を形成した状態です。

■乳輪下膿瘍
 乳頭のまわりの色素が沈着している皮膚を乳輪といいますが、この下に膿瘍が生じることが多く、乳輪下膿瘍と呼ばれます。陥没乳頭に合併することが多く、乳管上皮の変性で乳管拡張をきたし、陥没した部分に汚れが溜まり細菌がついて感染を併発したものです。切開排膿で症状は軽減します。しかし慢性化すると、乳輪の周りの蜂巣炎、乳頭分泌(乾酪性、血性分泌)、乳頭瘻孔(トンネルをつくります)をきたし、切開と排膿を繰り返す、慢性・再発のコースをたどるようになります

どんな症状

 急性乳腺炎も乳輪下膿瘍も、乳房が赤く腫れて、痛みがでます。

どんな診断・検査

 ほとんどが授乳中のため検査はしません。重症化した場合、乳がんとの鑑別が必要な時にのみ検査の必要が生じます。

どんな治療

 治療としては患部を冷やしたり、乳房マッサージ、搾乳を行い母乳のうっ滞をとり、予防的に抗生物質の投与を行います。

 しかし、化膿性乳腺炎の場合、乳房の腫脹・疼痛が出現し、圧痛を伴うしこりをつくり、発熱、発赤、脇の下のリンパ節炎を併発し、膿瘍を形成をします。このような状態になると、抗生物質投与が必要になります。膿瘍が大きくなると、切開や膿のたまったところに細い管をいれて排膿することがあります。このような治療でも改善しない場合は、炎症性乳がんなど他の疾患の除外診断を行う必要があります。

 乳輪下膿瘍の場合、切開排膿で症状は軽減しますが、慢性化することが多く、慢性化した場合は根本的な病巣の切除が必要です。また陥没乳頭の形成手術が必要な場合もあります。

どんな予防

 乳汁うっ滞を起こさないようにすることが重要です。そのためには、授乳リズムを崩さないようにしましょう。授乳をまめに行い、乳房の張り感じた時か、遅くても前回の授乳から3時間以内にの飲ませるようにします。授乳は乳腺炎をきたしはじめている乳房から行うようにします(赤ちゃんに最初に飲んでもらい十分に母乳を吸い出してもらいます)。

 十分に授乳できない時は、乳房マッサージをして、溜まった母乳をしぼりだします(搾乳)。温めると炎症が悪化しますので、痛みが強い時は保冷剤や冷却ジェルで乳房を冷やします。ただし、授乳前には赤ちゃんがびっくりしないように乳房を温めましょう。

 乳輪下膿瘍の予防には、原因となっている陥没乳頭がある場合、一日一回は乳頭を引っぱり出して、乳頭の周りをマッサージします。特に入浴中に行うと清潔に保つことができます。引っ張りだしても突出してこない乳頭は形成手術が必要な場合もあります。

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