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結膜炎

【病気の知識】

監修:高橋現一郎・東京慈恵会医科大学眼科学講座准教授

どんな病気

 結膜は薄い膜で、眼瞼(まぶた)の内側をおおい、さらに折り返して強膜(白目の部分)もおおっています。この折り返しによって、コンタクトレンズがずれても目の奥に行ってしまうことがありません。結膜は眼を異物やウィルスなどの感染から守るために役立っていますが、直接外界と接しているので、化学物質で刺激を受けたり、アレルギー反応を起こしたり、ウィルスや細菌の感染を受けやすい場所です。こうして結膜に炎症を起こしたものを結膜炎といいます。

 結膜炎の主な原因は、感染性結膜炎(細菌性結膜炎・ウィルス性結膜炎)、非感染性結膜炎(アレルギー性結膜炎など)に分類されます。また結膜は、感冒、風、煙、大気汚染、雪に反射した明るい日光の紫外線などにも刺激されます。

 細菌性結膜炎では、外部からきた菌に感染する場合だけではなく、結膜に常在している菌が増殖したり、病原性が変わったりして起こすこともあります。また、ウイルス性結膜炎には、うつりやすいものもありますので、注意が必要です。

 アレルギーによる結膜炎は、原因によって、季節性アレルギー性結膜炎と通年性アレルギー性結膜炎に分けられます。季節性アレルギー性結膜炎は、スギ、ヒノキ、イネ科の植物、キク科の植物の花粉などが原因となり、通年性アレルギー性結膜炎は、ダニ、ハウスダスト、カビ、動物の毛などが原因になります。

どんな症状

 結膜炎を起こすと、充血して眼に分泌液(目やに)が多くみられるようになります。充血のほかに視力の低下や眼の痛み、頭痛、吐き気などがある場合は、「虹彩炎」や「急性緑内障発作」など、重い病気の場合もあるため注意が必要です。

【感染性結膜炎】

①細菌性結膜炎
 充血、目やに、異物感などの症状がみられます。インフルエンザ菌、肺炎球菌、淋菌、ブドウ球菌などが原因になります。原因菌によって、急性に経過するものと、慢性に経過するものがあります。特殊な細菌性結膜としてクラミジア結膜炎があります。クラミジアは、微生物学的には細菌に分類されますが、ちょっと特異な病原体で、「細菌とウイルスの中間」とも言われています。性感染症のクラミジア感染症は、近年、急速に増加し、それにつれて結膜炎も同様に増加してきました。性行為の際に感染するケースと、新生児の産道感染によるものとがあります。クラミジア結膜炎では、感染源となった性感染症への対応も重要で、本人はもちろん家族やセックスパートナーの問診・診察・検査も必要となります。

②ウイルス性結膜炎
(1)流行性角結膜炎〔はやり目〕
 感染して1週間くらいすると、眼の充血、涙、まぶたの腫れなどの症状が出はじめ、目にゴミが入ったときのようなゴロゴロ感や、耳の前のリンパ節が腫れ触れると痛むことがあります。大量の目やにを伴うことが多く、朝起きた時に目やにで目が開け難いほどです。発病約1週間後に、角膜の表面に砂をまいたような濁りができ、まぶしさや見難さの原因になることがあります。最初は片目だけに症状が出ても、のちにもう片目にも症状が出てくることが多いです。家族など身近な人が罹患していなくても、電車のつり革などからもうつることがあり、いつうつったかはっきりしないことが多いです。
 充血や目やになどの症状は、多くは約2〜3週間で治癒しますが、角膜の濁りは数か月治療が必要になることもあります。充血が取れたからと治療を中止すると、角膜の濁りが後遺症として残ることあります。治癒したことを医師から告げられるまでは自己判断しないことが大切です。
 はやり目では、まぶたの裏の結膜に偽膜が出来ることがあります。除去しないと、結膜と眼瞼(まぶた)の裏が癒着(瞼球癒着)することもあり、その場合は、眼球の動きが悪くなり、物がだぶって見えるようになることがあります。特に、乳幼児では重症化することが多く、「痛そう、泣いて可愛そう」だからと言って点眼をきちんと行わなかったり、診察に行かなかったりすると、弱視などの重篤な後遺症を伴うことがありますので、眼科医の指示通りに治療・通院することが大切です。

(2)咽頭結膜熱〔プール熱〕
 プールで感染することがあり、プール熱ともよばれます。感染してから5日くらいすると充血、目やになどの症状を生じますが、流行性角結膜炎と比較すると症状は軽いです。眼の症状以外に、咽頭炎による発熱や、のどの痛みを伴うことが特徴です。

(3)出血性結膜炎
 感染してから1日ぐらいで眼球結膜に出血を起こし、目やにや、目にごみが入ったようなゴロゴロ感、まぶしさがあらわれます。

【非感染性結膜炎】

①結膜アレルギー
(1)アレルギー性結膜炎
 アレルギー性結膜炎では、目にかゆみがおき、同時に鼻水やくしゃみが出る場合もあります。軽い充血や粘った分泌液が出て、白目がはれる場合もあります。

(2)春季カタル
 アレルギー性結膜炎の一種で、春や夏になると繰り返す傾向があることからこの名がつけられました。小児によく起こり、思春期から20歳前後に自然に治る場合もありますが、まぶたのアトピー性皮膚炎が治りにくいと、大人になっても症状が続くことがあります。激しいかゆみが特徴的で、粘った糸を引くような分泌液がでると目の痛みや眩しさを感じます。上のまぶたの縁の結膜が石垣上に腫れてピンク色から灰色がかったようになり、他の結膜部分は乳白色になる「眼瞼型」と、眼球を覆っている結膜が肥厚し灰色がかってくる「眼球型」があります。角膜に傷や潰瘍ができると激しい痛みを伴います。

(3)巨大乳頭結膜炎
 主にソフトコンタクトレンズを使っている人にみられます。上まぶたの裏にブツブツができて、目やにや充血、目のかゆみがでてきます。コンタクトレンズの汚れがアレルギーの原因になっているといわれています。

②非アレルギー性の結膜刺激症状
 異物、風、塵、煙、その他の大気汚染、または雪の反射光の強烈な紫外線により起こります。

どんな診断・検査

 どんな症状が、いつ、どうやって現れたかと、眼を診ることで診断します。細菌感染の疑いがある時は、眼の分泌物を綿棒などに採取して検査します。アレルギー性結膜炎では、血液を採取して調べると、複数の抗原について抗体値が数値で示され、それぞれの抗原に対するアレルギーの強さもある程度分かります。また、皮膚テストという検査もあり、疑われる抗原の液を不皮膚に付け、その抗原に対してアレルギー反応があると数分後に皮膚が赤く腫れ、その場で結果がわかる方法もあります。

 ウィルス性結膜炎、特にはやり目の原因になるアデノウィルスに対しては、迅速アデノウイルス検査キットがあります。但し、検査結果が陰性でもはやり目が完全に否定されるものではありません。確定診断は、医師が臨床症状などを含めて総合的に判断します。

どんな治療法

 結膜炎の治療方法は原因によって異なります。

①細菌性結膜炎
 抗生物質の点眼を行います。副腎皮質ステトイド薬の点眼を行う時もあります。

②ウイルス性結膜炎
 発症した後は、細菌の混合感染予防のために抗生物質の点眼を行います。また、副腎皮質ステトイド薬の点眼を行う時もあります。

③結膜アレルギー
1.アレルギー性結膜炎
 点眼薬(目薬)で治療します。抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬のほか副腎皮質ステトイド薬の点眼を用いることもあります。また、症状が強い場合は、飲み薬も併用します。
2.春季カタル
 日常生活の中では、抗原を取り除くことと、抗原から離れることが大切です。治療薬としては、抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬などの点眼薬や、症状によっては副腎皮質ステロイド薬の点眼やまぶたへの注射、抗ヒスタミン薬の飲み薬を併用します。時には、石垣状に腫れた増殖物を外科的に切除することもあります。また、傷や潰瘍が出来た場合は、角膜の治療も必要になります。
3.巨大乳頭結膜炎
 コンタクトレンズの装用を中止します。治療薬としては抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬のほか副腎皮質ステトイド薬の点眼を用いることもあります。

*治療を受ける上での注意点
 結膜アレルギーでは、副腎皮質ステロイド薬の点眼を併用することがありますが、痒みを軽減する効果は強いのですが、点眼の期間や頻度が多くなると、眼圧上昇から緑内障へ移行する副作用があります。漫然と使用することは避け、眼科医の指導のもと使用することが大変重要です。また、ステロイドレスポンダーと言って、使用期間が短くても副作用を起こしやすい人がいます。特に幼児では、眼圧が上がりやすいと言われておりますので、必ず眼科の診察を受けながら使用してください。

どんな予防法

①細菌性結膜炎
 感染者との接触を避けることや、手洗いの施行などが大切です。

②ウイルス性結膜炎
 気をつけないと人から人へと移っていきます。ウィルス性の結膜炎にかかった時は、目を触ったり、その手であちこち触れたりしないようにしましょう。家族の誰かが罹ると皆に伝染する危険性がありますので、お風呂や洗面台のタオルの共用は避け、手を流水でよく洗う事、紙タオルの使用や、手指のアルコール消毒などが、伝染予防のために有用です。また、伝染予防のために、仕事や学校は休む必要もあります。
 学校保健安全法では、児童や生徒は、症状が改善し医師の許可が出るまで、出席停止となります。出席停止の期間はおおむね1〜2週間となりますが、結膜炎の種類や症状により異なりますので、眼科医とご相談ください。成人は、特に決まりはありませんが、伝染予防のマナーとして、はやり目に感染したことを職場に報告し、就労の可否を相談してください。

③結膜アレルギー
1.アレルギー性結膜炎、春季カタル
 日常生活の中では、抗原を取り除くことと、抗原から離れることが大切です。花粉症など、季節性アレルギー性結膜炎の人は、その時期の2週間くらい前から抗アレルギー薬の点眼をすると、症状が軽くなることもあります。
2.巨大乳頭結膜炎
 コンタクトレンズの洗浄、蛋白除去をきちんとします。最近は使い捨てのコンタクトレンズが普及しており、衛生面では有効です。

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