ポテトチップスを除くジャガイモ料理を食べる頻度が高い人ほど高血圧に罹りやすい!?
2016年5月17日、ポテトチップスを除いたジャガイモ料理を食べる頻度が高い人ほど高血圧に罹りやすいとする意外な研究結果が『British Medical Journal(BMJ)電子版』に掲載された(Lea Borgi, Eric B Rimm, Walter C Willett, John P Forman. Potato intake and incidence of hypertension: results from three prospective US cohort studies. BMJ 2016; 353)。
塩分(ナトリウム)を摂り過ぎると、血圧が上がる。果物類、豆類、野菜類、芋類、肉類、魚介類に豊富なカリウムは、体内の余分なナトリウムを尿として排泄するので、血圧を下げる効果がある。
ジャガイモは、カリウムの含有量が多い(100gあたり330mg)ため、ジャガイモをよく食べれば高血圧を予防できる。それが世界の常識とされてきた。だが、ジャガイモ料理の摂取と高血圧の関係性を究明した研究はほとんどない。
米国の研究グループ(Eric B Rimm教授、Walter C Willett教授、Lea Borgi准教授、John P Forman助教授)は、米国の男女医療従事者約18万7453人を20年間にわたって追跡し、どのようなジャガイモ料理をどのくらいの頻度で食べたかを調査。焼きポテト/茹でポテト/マッシュポテト、フライドポテト、ポテトチップスの摂取と高血圧の関係を分析した。
その結果、7万7726人(約41.5%)が高血圧と診断され、ポテトチップスを除いたジャガイモ料理を食べる頻度が高い人ほど、高血圧に罹りやすいことが判明した。
ジャガイモはGIが高いので血糖値が上がりやすく高血圧を引き起こすリスクが高い
このような大規模な前向きコホート(対象者母集団)研究は、どのように進められたのだろう? 使用したのは、3つのコホートデータだ。
第1群:米国看護師健康調査(NHS:1976年登録開始、30~55歳の女性、12万700人)
第2群:米国看護師健康調査II(NHS II:1989年登録開始、25~42歳の女性、11万6430人)
第3群:米国医療従事者追跡調査(HPFS:1986年登録開始、40~75歳の男性、5万1529人)。
このうち研究開始時に高血圧でなかったNHS:6万2175人、NHS II:8万8475人、HPFS:3万6803人が対象になった。
調査方法はこうだ。まず、ジャガイモ料理を「①焼きポテト/茹でポテト/マッシュポテトのいずれか」「②フライドポテト」「③ポテトチップス」の3つに分類。ジャガイモ料理の1回分の摂取量を決定。焼きポテト/茹でポテト/マッシュポテトはジャガイモ1個分または1カップ、フライドポテトは113g(4オンス)または1皿、ポテチは小袋または28g(1オンス)。次に、対象群を4つの摂取量別に「月に1回未満」「月に1~3回」「週に1~3回」「週に4回以上」の4分類した。
その結果、高血圧と診断された7万7726人(約41.5%)の内訳は、NHS:3万5728人、NHS II:2万5246人、HPFS:1万6752人。摂取量が「週に4回以上」の集団は、「月に1回未満」の集団と比較すると、高血圧の発症リスクが次のように変化した。
①焼きポテト/茹でポテト/マッシュポテト群
NHS:13%増加、NHS II:25%増加、HPFS:5%減少
②フライドポテト群
NHS:17%増加、NHS II:17%増加、HPFS:16%増加
③ポテトチップス群
NHS:3%増加、NHS II:2%増加、HPFS:14%減少
すなわち、焼きポテト/茹でポテト/マッシュポテトを週に4回以上食べる女性と、フライドポテトを週に4回以上食べる男女は、高血圧のリスクが有意に高かった。一方、ポテトチップス群は、男女ともリスクの増加は有意に低かった。