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パートナーとの離別・死別は余命に影響~離婚しやすい「60~70年代生まれ」はどうなる?

平均余命自体が最下位を物語る過去資料

 そこで、思い起こされたのが知る人ぞ知る、『配偶関係別生命表』という興味深い過去の資料だ。

 これは国立社会保障・人口問題研究所が発行する雑誌『人口問題研究』(1999年)に載ったもの。日本人の男女を①配偶者あり、②配偶者と死別、③配偶者と離別、④未婚の4グループに分類し、それぞれの「平均余命」を算出して公表した。

 基礎データは、国勢調査や人口動態統計を用いつつ、平均余命の算出という難儀な作業の特性上、分析対象期間も1955年~1995年といささか古めだ。

 しかし、さらに20年超の歳月が流れた現在から当時の報告を読むと、それはそれで興味津々の数字が並ぶ。

 たとえば「男女の50歳時の配偶関係別にみた平均余命」(1995年)という掲載表によれば、男性陣が長い順に①②④③と「未婚組(21.78歳)」よりも「離別組(20.85歳)」が短く、「有配偶組(29.51歳)」と比べると、9歳もの開きが際立つ。

 ちなみに、女性陣の場合は①②③④の順で、巷間いわれる未婚組の余命が最も短い。①35.73歳と比して③31.30歳と、男性層(既婚・非婚)ほどの余命格差は認められていない。

 さらに、「配偶関係別死因別死亡確率」(1995年)で4グループの各特徴を閲覧すると、③の離別組男性陣の場合は「自殺」と「肝硬変」がいずれも死因の首位。

 それも、他の3群比でかなり%の高いのが歴然だ(同・女性陣は自殺が2位、肝硬変が首位だが%上の大差はない)。

 こうして、婚姻状況の変化がアルコール摂取量を増やした結果、循環器系の発症リスクを高める。

 あるいは居住形態や経済環境が一変し、人間関係の複雑さも絡まってストレスを抱えやすい(最悪例は自殺へ)という傾向は、過去にも報告されてきた。

「脳卒中タイプ別」はほぼ未踏な研究分野

 だが、今回のJPHC報告で明かされた「脳卒中発症リスクとの関連」は稀な主題、とりわけ「脳卒中タイプ別の検討」はほとんど未踏な研究分野だったという。

 しかも前述のとおり、これらの関連に「男女差」が認められないという結果報告が興味深い。

 もし、前掲『配偶関係別生命表』の最新版があれば、この20年間の4群の余命変化や死因別の違いが俯瞰できるのだろうが、さて実態はどうなのだろうか。

 今回の成果を踏まえて研究班は今後、脳卒中発症のハイリスク層を把握するに際して、患者をとりまく、もろもろの環境(変化)を考慮する必要性があることを示せたとしている。

 昨年公表された、調査レポート『定着する中高年の離婚~多様化するライフコースの選択~』(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調べ)によれば、離婚件数のピークは2002年(28万9836組)。その後は減少傾向にあるらしい。

 なかでも2000年代以降は、「婚姻期間10年未満の夫妻の離婚」が減少しているものの、いわゆる「熟年離婚」は横ばいが続いており、40歳以上の離婚が定着。

 とりわけ、1960年代後半~1970年代前半生まれの世代、比較的な離婚に至りやすい傾向があるという。

 今年は1966年生まれがまさに満50歳を迎えるが、彼ら熟年離婚世代の「男女の50歳時の配偶関係別にみた平均余命」が編まれたら一体、どんな数字が弾き出されるのやら……。
(文=編集部)

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