外見上の老化が全身のバロメーターに? Nejron Photo/PIXTA(ピクスタ)
いつの頃からだろうか、巷に「アンチエイジング」に関する情報や商品があふれかえり、「美魔女」がもてはやされるようになったのは――。美に敏感な女性にかぎらず、男性の間でも「実年齢よりも若く見えているか」を気にする人が増えているようだ。
この「実年齢より若い」という気になるトピックで、少し興味ある研究成果が報告された。「老化の速度」が早い人を見分けるには、血液検査よりも顔の特徴を分析するほうが信頼性の高いというもの。
中国科学院の学術雑誌『Cell Research』(3月31日号)に掲載された中国による研究報告では、コンピューターの3D顔面撮像の処理で、老化の速度を示すいくつかの特徴が明らかになったという。
332人の顔から老化パターンを分析
今回の研究では、17~77歳の中国系332人の3D顔面像を収集し、そのデータに基づいて年齢予測モデルを構築。具体的な顔の特徴による、特定の老化パターンを認識するマップを作った。
その結果、40歳までは実年齢が同じ人の顔年齢に最大6歳の差がみられることが判明。40歳を超えると、顔年齢の差はもっと広がった。さらに「顔スキャン」の結果と血液検査を比較すると、顔の特徴から推定した年齢のほうが、血液中のコレステロールや尿酸、アルブミンなどの数値よりも精度が高いことが分かったという。
このことから、顔面のスキャンだけでも通常の身体検査より正確な全身の健康状態を評価できる可能性がある、と研究グループは示唆している。
"顔"の解析は老化研究のトレンドに?
これについて、米・イリノイ大学(シカゴ)でパブリックヘルスを研究するJay Olshansky 氏は「老化科学の分野では、年齢よりも若く見える人は老化が遅いことがわかっている」と指摘。こうした顔面の解析は、寿命を簡単に推定し、健康面の危険因子を評価する最先端技術のひとつであるという。
現在、「顔の老化」から、糖尿病や肥満、薬物使用などが健康にどう害を及ぼすかの研究が進められているという。Olshansky 氏は、いずれは生命保険会社もこの技術を活用できるようになると予想。「血液検査なしで、顔分析と問診の組み合わせで、簡単に健康リスクの高い人が分かるようになる」と述べている。
一方、米・顔面形成外科学会のStephen Park氏は、「今回の研究では比較するための対照群を設けていないため、身体的な老化が実年齢より速い人や遅い人がいるかどうかはわからない」と主張している。この知見を裏付けるには、まだまだ継続的な研究が必要なようだ。
一般的にしわやフェイスラインのたるみなど、外見上の老化は美容的な観点でのみ捉えられがちだ。しかし、「老け顔」から身体全体の老化シグナルを明確に読み取れるとしたら、画期的である半面、目に見える老いが気分をさらに減退させそうだ。やはり、うわべだけの若作りではなく、「アンチエイジングは体の中から」が基本だということだ。
(文=編集部)