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羽生結弦は極めて危機的な状況にあった!? 致死率50%の「セカンドインパクトシンドローム」とは?

●全国柔道連盟、国際ラグビー評議会などはガイドラインを設定

しかし、脳しんとうはいったい何がそれほど危険なのだろうか?実は脳しんとうは2度目、3度目が怖い。脳しんとうを起こした後、その状態から回復する前に、再度、脳に衝撃を受けた場合、それが軽度であっても、重篤な状態に陥る危険が高いのである。短期間に2度の脳しんとうを起こすことを「セカンドインパクトシンドローム」と呼び、致死率50%とも言われている。

「セカンドインパクトシンドローム」の悲劇を防ぐため脳しんとうを起こした選手の復帰に関して、スポーツ界ではさまざまな規定を設けている。全国柔道連盟では、当初からまったく正常な場合であっても1日~数日は練習を休止、安静観察としていて、医師が脳しんとうと診断した場合は2~4週間練習休止と定めている。国際ラグビー評議会(IRB)は脳しんとうガイドラインを定めており、そこで「頭部外傷の後、なんらかの症状があるアスリートはすべて、プレー、または、練習を止めさせて、また、すべての症状が消えるまで、活動に戻ってはならない」としている。特にこどもや青年は脳が未成熟で障害を受けやすく、危険が高いため、症状がなくなってから最低2週間はプレーを休ませるようにと定めている。

 羽生選手はまだ19歳の未成年。今回の事故後すぐのフリー出場は非常に危険だった。感動を呼んだフリーの演技中に何度も転倒していたが、その際、頭に衝撃を受けて、死んでしまった可能性も高かったのである。

 棄権しなかったのは「当人の出場の意思が固かったため」とされているが、選手に聞けば「大丈夫」と答えるし、「棄権したくない」と言うだろうが、客観的、かつ医学的知識を持って練習や競技を続けたがる選手を止め、安静にさせて、選手を守るべきは周囲の大人たちだ。

(文=編集部)

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