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流産

【病気の知識】

どんな病気

 受精した卵が分割しながら子宮の中へ入ってきて、子宮内膜からの分泌液に捕まえられて着床という現象がおき、妊娠といえる状態になります(つまり受精と妊娠は違います)。流産とはその着床した妊卵(受精卵)が子宮の外へ出てしまうことをいいます。

 流産といわれる時期は妊娠24週未満(最後の月経の始まった日から妊娠23週6日まで)で、胎芽(8週未満)といわれるときから胎児といわれる時まで成長に差があることから、妊娠12週未満を早期流産、妊娠12週から24週未満の流産を後期流産といいます。

どうしてなるの

 原因としては母体の側と胎児の側の両方が考えられます。

○母体側の因子

①ホルモン因子
 黄体ホルモンの分泌不足は着床の状態を悪くしたり、子宮の収縮に敏感になって流産を起こしやすくなります。また、黄体ホルモンははじめ卵巣の黄体で作られていたものが、その後成長してきた絨毛から供給されるようになります。その移行期(妊娠9〜10週頃)に流産が起こりやすいとされています。
 hCGの産生不全も流産を起こしやすくなります。hCGは妊娠したことによって働いている卵巣の黄体に活力を与えて、胎盤でホルモンが作られるまでのサポートをします。
 プロスタグランディンというホルモンはその作用の中に妊娠の継続に逆行する働きがありますので、この値が高いと流産を起こしやすいとされます。

②子宮の異常
 子宮が二つに重なっていたり(重複)、角のようなかど(双角)があるような高度の奇形や子宮筋腫(主に粘膜下筋腫)のような腫瘤のある場合、子宮の入り口に近い部分(頸管)が切れて(裂傷)いたり、閉まる力が弱かったり(無力症)する場合も大きな因子ですが、さらに子宮の発育が良くないことも原因となります。

③感染症
 子宮が感染を起こしたときも流産をきたします。特に梅毒によるものは妊娠中期におこりますが、ほかに、風疹などのウイルス疾患、トキソプラズマ症、リステリア症などが知られています。

③その他
 最近増えている喫煙や飲酒も誘因となることが指摘されています。

○胎児側の因子

①染色体異常
 妊娠初期に流産した児の20〜60%に染色体異常があるとされます。その中でもトリソミーといって2本ずつ対になっているべきところが1ヵ所3本になっているものが一番多くなっています。これは遺伝的なものではありませんが、その原因は不明です。

②胎児付属器物の異常
 この中では胎児への血液を送るのに重要な働きをしている臍帯(セイタイ・へその緒)の異常が一番多くみられます。

③枯死卵
 これは流産の原因ではありませんが、受精卵が発育の初期に分割の異常があると変性を起こして変化した場合をいいます。

どんな症状

 流産はその状態によって8つに分類され、症状も違ってきます。しかし、主な症状は出血と下腹部痛です。

①切迫流産:流産が始まろうとする状態です。症状としては少量の出血と軽い下腹部痛(ない時もあります)ですが、この時期は子宮の入り口(頸管)が開いていないので、妊娠継続を期待することが可能です。

②進行流産:子宮の収縮によって起こる陣痛様の下腹部痛が始まって出血も多くなり、流産が進行した結果頸管が開いてしまっている状態です。しかし、まだ胎児やその付属物が子宮の中に留まっているので子宮の大きさはあまり変わっていません。

③完全流産:子宮の内容物である卵の成分が排出されてしまったために、子宮は収縮してしまい大きさも小さくなり、出血や腹痛もほとんど感じなくなっている状態です。

④不全流産:卵成分の一部は子宮から排出されていますが、まだ一部が残っている状態。従って、子宮は収縮していてもやや大きめで、頸管が開いているので出血があります。

⑤稽留流産:妊娠24週未満で、胎芽あるいは胎児が死亡してしまっているのに症状なしに子宮の中に停滞している状態です。

⑥延滞流産:流産のしるしが現れてから長い期間卵の排出がないために少量の出血が続きます。この場合、子宮の中に残った胎盤片から胎盤ポリープというものができることもあります。

⑦感染流産:流産の経過中に子宮の中に感染が起こったもので、発熱することがあります。さらに、原因となった菌が血液中に侵入すると敗血性流産、敗血症と重篤になる危険性もあります。

⑧頸管流産:流産が進んでいく過程で子宮の入り口があまり拡がっていないために卵の部分が頸管に留まっている状態です。

どんな診断・検査

①妊娠の確定
 まず、妊娠が前提となります。妊娠の診断は通常妊娠反応が陽性(尿中hCGの上昇)か超音波断層法で妊娠5週以後で子宮内に胎嚢が確認されることによって行われます。

②流産の徴候
 無月経後に子宮出血があるとか、下腹部の張る感じ(緊満感)や子宮の収縮による規則的な痛みが始まりです。そして、病状の程度によって切迫流産から進行流産へと進むかどうか、さらに、完全流産か不全流産か、あるいは、他のタイプの流産なのかが検討されます。

③流産の診断と検査
 流産状態にあるとき一番気になることは胎児の生死に関する診断です。それは今日では超音波断層法によることが多いといえます。
 妊娠6週以後ですと胎児心拍の有無によれますが、妊娠5週までですと胎嚢の大きさや形から判断されます。また、同じく補助診断として、妊娠反応に利用されている尿中hCG(ホルモン)の定量で、そのタイトルが下がっていないかどうかも大事なポイントです。
 妊娠12〜13週になると超音波ドップラー法で胎児の心拍動音や胎動を聴くことができるようになります。鑑別しなければならないものに子宮外妊娠の中絶(育たなくなったもの)と胞状奇胎がありますが別項をご参照下さい。また、参考になるものとして、基礎体温の下降があります。急に体温が下がったり、翌日の体温が上昇しない場合は注意を要します。
 胎児の発育が止まりますと、子宮は大きくならず、子宮の口も開き気味になってきます。さらに精密な検査となるとホルモン測定となりますが、種類としては血中hPL、尿中プレグナンジオール、血中プロゲステロン、血中および尿中エストロゲンがあります。

どんな治療法

①切迫流産の場合
(1)安静:この時期は安静が一番です。できれば入院、就床による絶対安静が望まれます。
(2)薬物療法:原則としてホルモン剤(hCG高単位、黄体ホルモン)、子宮収縮緩和剤、止血剤の三種類が投与されます。

②進行流産および不全流産などの場合
 子宮内の胎児の生存が確認できず、子宮内容物が排出されつつあるか、不完全に排出された場合には放って置くと出血が長引いたり感染がおこるので、子宮内容を除去する手術を行います。なお、感染流産では十分抗生剤を投与してから行われます。

どんな予防法

 人間の場合、四足の動物と比べて流産がおおいのは立って歩くようになったからだと言う人がいます。流産した人に聞くと初妊の人は妊娠に気付かず無理をしていたと答えた人の多かったのに比べ、経産婦の人では気を付けてはいたが、こどもにかかわることで安静がとれず無理をしてしまったという返事が返ってきました。このように内容には差がありますが、流産のおこる頻度は経産婦や妊娠回数の多い人、母体年齢が高い人に多いとされています。

 したがって、予防としては月経が遅れているときは妊娠を想定して無理をせず、妊娠が判明したら胎児環境を良い状態に保てるように配慮することが大切です。
また、漢方の当帰芍薬散に安胎効果があるということで流産の予防に処方されます。

習慣流産について

 連続3回以上の自然流産を繰り返した場合を習慣流産といいます。この原因は胎児側の因子、母体側の因子について研究されていて、原因のわかることもありますが、原因不明で治療に苦労することもあります。

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